寄生虫名 Anguillicoloides crassusトガリウキブクロセンチュウ)
分類学 線形動物門、双腺綱、旋尾線虫目、カマラヌス亜目
宿主名 ウナギ(Anguilla japonica)、ヨーロッパウナギ(Anguilla anguilla
病名 鰾線虫症
寄生部位 腔内
肉眼所見 ニホンウナギの場合、外観的には判別できない。腔内に寄生した虫体を観察することにより確認する。一方、ヨーロッパウナギでは重度寄生を呈することが多く、内に充満した虫体により鰾が膨張するだけでなく、虫体に対する炎症反応により腹部が膨れ上がる(写真1)。
寄生虫学 成虫の大きさは雌で4-7 cm、雄で2-6 cm程度で、茶褐色に見える(写真2)。雌成虫は鰾内で産卵・産仔し、気道と消化管を経て水中に放出された後、シクロプス類などの中間宿主に捕食される。その体内で3期幼生となり、ウナギに捕食されて感染する(広瀬ら, 1976)。本種は、以前Anguillicola crassusとして扱われていたが、Moravec (2006)によりAnguillicoloides属に転属された。
病理学 ニホンウナギでは、とくに深刻な病理変化は見られない。ヨーロッパウナギでは、大量寄生により鰾が膨満して内臓器官が圧迫され血行障害を起こす。成虫の崩壊に伴い、鰾壁に激しい炎症反応が起き肉芽腫が形成される。虫体の崩壊物は消化管にも流入して腸炎を呈する。
人体に対する影響 人間には寄生しないので、食品衛生上の問題はない。
診断法 鰾内の虫体の形態を観察する。近縁のAnguillicola globiceps(ウキブクロセンチュウ)とは、頭部や食道などの形態により識別できる。
その他の情報 A. crassusはもともとヨーロッパには存在しない寄生虫であったため、ヨーロッパウナギに対する感受性が高く、病気として顕在化したものと考えられている(小川、2004)。
参考文献 広瀬一美・関野忠明・江草周三(1976):ウナギの鰾寄生線虫Aguillicola crassaの産卵、仔虫の動向、および中間宿主について。魚病研究, 11, 27-31.

Moravec, F. (2006): 'Doranculoid and Anguillicoloid Nematodes Parasitic in Vertebrates', Academia, Prague, 634 p.

小川和夫(2004):大型寄生虫病。「魚介類の感染症・寄生虫病」恒星社厚生閣, pp. 381-405.

(写真提供者:広瀬一美)

写真1.トガリウキブクロセンチュウの寄生により腸炎を呈した
ヨーロッパウナギ

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写真2.ヨーロッパウナギから取り出した虫体

または