寄生虫名 Clinostomum complanatum(クリノストマム・コンプラナータム)
分類学 扁形動物門、吸虫綱、有襞吸虫目
宿主名 ドジョウ(Misgurnus anguillicaudatus)、フナ(Carassius auratus)、アユ(Plecoglossus altivelis)など多くの淡水魚
病名 クリノストマム症
寄生部位 体表付近の筋肉組織
肉眼所見 外観的には、黄白色で楕円形(長さ2 mm前後)の被嚢虫体が確認できる(写真1)。
寄生虫学 魚類に寄生するメタセルカリア幼虫は、サイズが約5 mmである(写真2)。第1中間宿主はモノアラガイであり、その中でレジアからセルカリアとなって貝から遊出した後、第2中間宿主である魚類に侵入する。体表近くの筋肉組織内で被嚢して、メタセルカリアとなる。終宿主は魚食性のサギ類であり、その口部や食道に寄生する(小川、2006)。
病理学 一般的に病害性は低いが、大量寄生すると成長が遅れ、養殖アユでは大量死したとの報告がある(Lo et al., 1981; 1985; 矢野原、1989)。魚に対する影響が大きいのは、薬剤使用や水温変動によってメタセルカリアが刺激を受け、脱嚢して魚体外に移動しようとした時である(Lo et al., 1985)。虫体周囲の組織は溶解して出血やうっ血が起こり、死に至る場合もある。
人体に対する影響 人間の咽頭に寄生し、咽頭炎の原因となる。外科的に容易に摘出できるが、ドジョウの踊り食いは避けるべきである。
診断法 被嚢幼虫を取り出して、メタセルカリア虫体の形態を確認する。
その他の情報 日本ではドジョウの養殖において稚魚の8%、台湾では養殖アユに多数、発生したとの記述がある(矢野原、1989)。対策として、井戸水を使用して貝類の侵入を防ぐことや、防鳥ネットによりサギ類の捕食を防ぐことなどが考えられる。
参考文献 Lo, C.-F., F. Huber, G.-H. Kou and C.-J. Lo (1981): Studies of Clinostomum complanatum (Rud., 1819). Fish Pathol., 15, 219-227.

Lo, C.-F., S.-C. Chen and C.-H. Wang (1985): The study of Clinostomum complanatum (Rud., 1819) V. The influences of metacercaria of Clinostomum complanatum on fish. Fish Pathol., 20, 305-312.

小川和夫 (2006):クリノストマム症。新魚病図鑑、緑書房、p. 132.

矢野原良民(1989):クリノストマム症。魚病図鑑、緑書房、p. 226.

写真2.C. complanatumのメタセルカリア。

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(写真提供者:小川和夫)

または

写真1.クリノストマムの寄生を受けたドジョウ。