寄生虫名 Dactylogyrus spp.(ダクチロギルス)
分類学 扁形動物門、単生綱、単後吸盤目
宿主名 コイ(Cyprinus carpio
病名 ダクチロギルス症
寄生部位
肉眼所見 外観症状は見られない。剖検的には、鰓粘液の多量分泌が観察される(写真1)。
寄生虫学 日本ではD. extensusD. minutusヨーロッパではD. vastatorが良く知られている。体長はD. extensus D. minutus 1-2 mm0.5 mmD. vastator1.2 mm程度である。前端に2対の眼点を持ち、後端にある固着盤で宿主に付着する。固着盤中央には1対の鉤、それらを支持する支持棒、7対の周縁小鉤がある(写真2)。虫卵から孵化した幼生は約1日以内に宿主の鰓に到達し、脱繊毛して寄生期に入る。鰓弁上皮組織を摂取し、夏は1週間で成熟、産卵する。
病理学 鰓の寄生部位周辺で組織増生が観察される。増生が進むと鰓薄板が癒着し、鰓弁の棍棒化が起きる。結果として感染魚の呼吸効率は低下し、呼吸障害によって死亡することもある(小川, 2004)。
人体に対する影響 人間には寄生しないので、食品衛生上の問題はない。
診断法 虫体の圧平標本を作製して、形態学的な観察を行う。スズキに寄生するD. inversusは体長2.5 mmに達することと、周縁小鉤の形態で区別できる。
その他の情報 対策として、0.3-0.5 ppmのトリクロルホンを養殖池に散布することが有効である。また、新しく魚を導入する前に池の水を抜いて乾燥させ、池底に残った虫卵を殺すことも効果的である(小川, 2004)。
参考文献 小川和夫 (2004): 単生虫病. 魚介類の感染症・寄生虫病(若林久嗣・室賀清邦編), 恒星社厚生閣, pp.353-379.

写真1.Dactylogyrusが多数寄生したコイの鰓.

写真2.D. extensusの虫体。

(写真提供者:小川和夫)

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