寄生虫名 Eudiplozoon nipponicum(フタゴムシ)
分類学 扁形動物門、単生綱、多後吸盤目
宿主名 コイ(Cyprinus carpio)、フナ(Carassius auratus)などコイ科の淡水魚
寄生部位
肉眼所見 通常、外観症状はないが、重度の寄生を受けると鰓が褪色する。
寄生虫学 X字状に雌雄が合体癒合し生殖器や消化器系が一体化した寄生虫である(亀谷、1976)。卵から孵化したオンコミラシジウム幼生が宿主魚の鰓に定着しディポルパ期幼虫となる。25℃で3日後から腹吸盤が形成され、4日後から2個体のディポルパが合体する(廣瀬ら、1987)。虫体の後端にある4対の把握器で鰓薄板をつかみ、吸血して成長する。
病理学 幼若赤血球出現率の上昇を伴う低色素性小赤血球性貧血を呈する(Kawatsu, 1978)。ウケクチウグイのフタゴムシ類(Eudiplozoon sp.)寄生では、寄生部位周辺に鰓呼吸上皮の細胞増生と鰓薄板の膨化がみられた(進藤、1997)。
人体に対する影響 人間には寄生しないので、食品衛生上の問題はない。
診断法 実体顕微鏡で鰓を観察し、X字状の虫体を確認する。虫体の圧平標本を作製して、形態学的な観察を行う。
その他の情報 目黒寄生虫館の初代館長である亀谷了氏が研究していた寄生虫ということで、このミュージアムのシンボルマークになっている。オスとメスができた最初の生物という説もある。
参考文献 廣瀬一美・赤松 博・日比谷京(1987):単生類Diplozoon nipponicumのディポルパの発達と合体について。日本水産学会誌、53953-957.

亀谷 了(1976):Diplozoon属について。動物分類学会会報、49, 1-9.

Kawatsu, H. (1978): Studies on the anemia of fish - IX. Hypochromic microcytic anemia of crucian carp caused by infestation with trematode, Diplozoon nipponicum. Bull. Japan. Soc. Sci. Fish., 44, 1315-1319.

進藤順治(1997):水槽飼育のウケクチウグイに見られた単生類フタゴムシの1種の寄生。動物園水族館雑誌、38, 88-92.

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写真1.X字状に合体したフタゴムシ虫体

写真提供:小川和夫