寄生虫名 Galactosomum sp.(ガラクトソマム)
分類学 扁形動物門、吸虫綱、異形吸虫科
宿主名 ブリ(Seriola quinqueradiata)、
トラフグ(
Takifugu rubripes)、
イシダイ(
Oplegnathus fasciatus)、
カタクチイワシ(
Engraulis japonica)、キビナゴ(Spratelloides gracilis)、マアジ(Trachurus japonicus
病名 吸虫性旋回病
寄生部位 間脳
肉眼所見 罹病魚は、水面を旋回などの異常遊泳をするのが特徴的で、それらを取り上げても外観的な異常は見られない。解剖すると、間脳に吸虫のメタセルカリア(被嚢幼虫)が見られる(写真1)。メタセルカリアは白色で、大きさは直径0.8-0.9 mm(写真2)。たいていの場合、寄生しているメタセルカリアは1個体である(木村・延東, 1979)。
寄生虫学 脱嚢させた虫体の大きさは、2.7-4.9 mmである(写真3)。魚類は第2中間宿主で、終宿主はウミネコであるが、第1中間宿主は特定されていない(亀谷ら, 1982)。
病理学 メタセルカリアが寄生部位の周囲の神経を圧迫し、神経の変性や壊死をおこすことによって異常遊泳が生じると考えられている。発症した病魚は1-2日で死亡する。
人体に対する影響 人間には寄生しないので、食品衛生上の問題はない。
診断法 流行地において上述のような異常行動を示す魚がいれば、吸虫性旋回病として仮診断できる。確定診断のためには解剖してメタセルカリアを確認する必要がある。脳組織を2枚のガラスシャーレの間でつぶし、実体顕微鏡の透過光で探す(キャンドリング)と容易に見つかる。
その他の情報 罹病魚は、異常遊泳のために終宿主のウミネコに発見、捕食されやすくなり、そのために寄生虫の生活環が回ると考えられている。本病の発生には地域性がある。これはおそらく、終宿主のウミネコの行動生態や第1中間宿主の生息域に関連すると考えられるが、生活環には未解明の部分が多い。なお、流行地であっても数km離れただけで発生がほとんど起こらない場合も報告されている(安永ら, 1981)。また、本病の発生は8月上旬から9月上旬の水温24-27℃の頃に限定される(安永ら, 1981)。これは第1中間宿主からのセルカリア放出時期と考えられる。本病に対する治療法は知られておらず、流行地では魚への侵入期に魚の飼育を避ける以外に現実的手段はない。
参考文献 亀谷俊也・安永統男・小川七朗・安元 進 (1982): ウミネコの吸虫Galactosomum sp.(養殖魚狂奔病の原因虫)について. 寄生虫学雑誌, 31, 増刊号, p. 31.

木村正雄・延東 真 (1979): カタクチイワシおよび養殖ハマチの旋回起因メタセルカリアについて. 魚病研究, 13, 211-213.

安永統男・小川七朗・平井榮一・畑井喜司雄・安元 進・山本博敬
(1981): 海産魚のガラクトソマム症について 主として原因虫の種類と生活環の検討. 長崎県水産試験場研報, 7, 65-76.
ブラウザの「戻る」で前頁へ

または

写真3.Galactosomum sp.の虫体

写真2.罹病トラフグから取り出した
Galactosomumのメタセルカリア

写真1.罹病トラフグの頭部を切開し、脳を露出して間脳に
検出されたGalactosomumのメタセルカリア(矢印)