写真2.G. plecoglossiの胞子。

寄生虫名 Glugea plecoglossi(アユグルゲア)
分類学 微胞子虫門、微胞子虫綱、微胞子虫目
宿主名 アユ(Plecoglossus altivelis
寄生部位 腹腔内
肉眼所見 軽症魚では外観的な異常は認められず、解剖して初めて内臓表面「グルゲアシスト」(大きさ3-4 mm)が検出される。重症魚では、腹腔内が多数のシストで充満し、腹部膨満を呈する(写真1)。
寄生虫学 シスト内部に多数の胞子が形成される(写真2)。胞子は楕円型で長さ平均5.8 μm、幅平均2.1 μm。寄生体は宿主の貪食細胞の中で発育し、キセノマ(宿主細胞と寄生虫の複合体)を形成する(写真3。キセノマ内では寄生虫の増殖(メロゴニー)および胞子形成(スポロゴニー)が行われ、最終的には胞子で充満する。この段階でキセノマは直径が最大5 mmに達し、肉眼的にシストとして観察される。
病理学 重篤感染魚においては、腹水の貯留ややせ症状を呈することがあるが、死亡することはまれである。胞子形成が終了すると宿主の炎症細胞が浸潤し胞子の貪食と肉芽腫形成が起こる。
人体に対する影響 人間には寄生しないので、食品衛生上の問題はない。
診断法 腹腔内に可視大のシストが見出された場合は、本症と診断してほぼ間違いない。シストをつぶしてウェットマウントで胞子を確認する。標本はスメアにしてUvitex 2B染色し、蛍光顕微鏡で観察する。染色された胞子は、紫外光で青い蛍光を発する。
その他の情報 琵琶湖産のアユを地下水で飼育するとグルゲア感染魚が出現することから、琵琶湖に感染源があると考えられる。しかし、琵琶湖で採捕されたアユにグルゲア症病魚は見つかっておらず、琵琶湖内での感染環は不明である(Takahashi and Ogawa, 1997)。その他の海産、河川産稚アユを養殖して発症した例もあるが(高橋, 1981)、琵琶湖以外の水域で感染環が維持されているかどうかは確認されていない。近年、人工種苗において本症の発生がしばしば問題となっている(写真4)。この場合、感染源は親魚由来と考えられるので、採卵・採精時に生殖巣にシストがないことを確認するべきである。対策として、発症する前のある時期に28-29℃の高水温飼育5日間を7日の間をおいて2回実施することが有効である。実際的には、天然種苗購入後の早い時期にこの高水温処理をすれば、本症はほぼ防除できる。ただし、高水温処理時には、他の病気の発生や性成熟に対する注意が必要である。
参考文献 高橋 誓 (1981): アユのグルゲア症に関する研究. 滋賀県水試研報, 34, 1-81.

Takahashi, S. and K. Ogawa (1997): Efficacy of elevated water temperature treatment of ayu infected with the microsporidian Glugea plecoglossi. Fish Pathol., 32, 193-198.
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写真3.腹腔内に形成されたキセノマの組織

写真1.重篤寄生したアユの剖検。

写真4.重篤寄生したアユ人工種苗