寄生虫名 Kudoa prunusi(サクラクドア)
分類学 ミクソゾア門、粘液胞子虫綱、多殻目
宿主名 クロマグロ(Thunnus orientalis
病名 脳粘液胞子虫症
寄生部位
肉眼所見 罹病魚の脳表面に径0.5mm程度の白色シストが見られる(写真1,2)。
寄生虫学 シストの内部で多数の胞子が産生される(写真3)。胞子は通常5個の極嚢を持ち、桜の花弁状。長さ平均7.5 μm幅平均9.6 μm、極嚢の長さ平均3.7 μm、幅平均2.0 μm。生活環は不明。中間宿主の介在が推測される。
病理学 寄生虫は中脳腔や小脳組織内に観察される。しばしば炎症反応やグリオーシスも見られるが、宿主魚への病害性は明らかにされていない。
人体に対する影響 人間には寄生しないので、食品衛生上の問題はない。
診断法 シストをつぶしてウェットマウントで胞子を確認する。オーストラリアのキス科魚類(Sillago ciliata)の脳に寄生する5極嚢のK. yasunagaiと計測値は重なるが、側面観の形状や極嚢の大きさが異なる。28S rDNAの塩基配列を比較すれば、明確に区別できる。クロマグロの脳には7極嚢のK. yasunagaiも感染するが、極嚢の数で容易に識別できる。標本はスメアにしてギムザ染色またはディフ・クイック染色する。
その他の情報 和歌山県で種苗生産されたクロマグロ幼魚に発見された。本疾病を防除するのに有効な対策はない。
参考文献 Meng, F., H. Yokoyama, S. Shirakashi, D. Grabner, K. Ogawa, K. Ishimaru, Y. Sawada and O. Murata (2011) Kudoa prunusi n. sp. (Myxozoa: Myxosporea) from the brain of Pacific bluefin tuna Thunnus orientalis (Temminck & Schlegel, 1844) cultured in Japan. Parasitol. Int., 60, 90-96.

(画像提供者:白樫 正)

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写真3.Kudoa prunusiの胞子

写真2.クロマグロの脳にみられたKudoa prunusi
のシストの拡大(矢印)

写真1.クロマグロの脳に見られたシスト(矢印)