寄生虫名 Microsporidium sp.SH(ミクロスポリジウム)
分類学 微胞子虫門、微胞子虫綱、微胞子虫目
宿主名 ホシガレイ(Verasper variegatus
病名 べこ病
寄生部位 体側筋肉
肉眼所見 外観的に体表の一部が陥没し(写真1)、内出血を呈する場合もある(写真2)。剖検的には、体側筋肉内に白色のシストが観察される(写真3)。
寄生虫学 シスト内部に多数の胞子が形成される(写真4)。胞子は平均長3.07mm、平均幅2.13 mm。ブリやマダイのべこ病の原因であるMicrosporidium seriolaeMicrosporidium sp. RSBの胞子と比較すると、本種の方が若干小さい(Yokoyama et al., 2008)。
病理学 病理組織学的特徴および寄生虫の発育過程は、ブリのべこ病と類似点が多い。すなわち、宿主由来の薄い結合組織に被包されたシスト内部で寄生体の増殖と胞子形成が行われる。しかし、病巣周囲に出血が観察される点や、種苗の累積死亡率が約20%に達した例もあることから、宿主への病害性は無視できないと考えられている。
人体に対する影響 人間には寄生しないので、食品衛生上の問題はない。
診断法 シストをつぶしてウェットマウントで胞子を確認する。標本はスメアにしてUvitex 2B染色し、蛍光顕微鏡で観察する。染色された胞子は、紫外光で青い蛍光を発する。
その他の情報 本病はブリやマダイのべこ病と同様、稚魚期の病気であるため、ホシガレイの成長に伴い回復すると考えられるが、成魚になってシストの一部が残存するかどうかは調べられていない。
参考文献 Yokoyama, H., F. Yokoyama, J.-Y. Zhang, K. Tsuruoka and K. Ogawa (2008): Microsporidian infection in the trunk muscle of hatchery-bred juvenile spotted halibut Verasper variegatus. Fish Pathol., 43, 137-143

写真3.べこ病を呈したホシガレイ稚魚の解剖所見。シストが多数観察される。

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写真4.Microsporidium sp. SHの胞子。バーは10 μm

写真2.べこ病を呈したホシガレイ稚魚。無眼側から出血患部が観察される(矢印)。

写真1.べこ病を呈したホシガレイ稚魚の外観。陥没部位が観察される(矢印)。