寄生虫名 Pseudodactylogyrus bini(シュードダクチロギルス・ビニ)
分類学 扁形動物門、単生綱、単後吸盤目
宿主名 ウナギ(Anguilla japonica
病名 シュードダクチロギルス症
寄生部位
肉眼所見 外観症状は見られない。剖検的には、鰓粘液の多量分泌が観察される。実体顕微鏡で観察すると、多数の虫体が鰓上で動いているのが見られる(写真1)。
寄生虫学 体長は約2 mm程度(写真2)。虫体の後端部にある固着盤で宿主に付着する。固着盤中央には1対の鉤が存在し、長さは50-60 μm宿主に感染してから成熟するまでに必要な日数は、25℃で8日、30℃で7日である。水温が30℃の時に最も盛んに産卵を行い、1日に約17個産んだという記録がある。虫卵は25℃で3-4日、30℃では2-3日で孵化する。(Buchmann, 1988)。
病理学 感染魚は、摂餌が低下して成長が悪くなる。クロコの場合は特に影響が大きい。病理組織学的には、鰓の寄生部位周辺で組織増生が観察される。これは、固着盤に存在する鉤が鰓組織深くまで到達しているためである。増生が進むと鰓薄板が癒着し、さらには鰓弁の棍棒化が起きる。結果として感染魚の呼吸効率は低下し、呼吸障害によって死亡することもある(小川, 2004)。
人体に対する影響 人間には寄生しないので、食品衛生上の問題はない。
診断法 虫体の形態学的な観察を行う。同じくウナギの鰓に寄生する近縁種のPseudodactylogyrus anguillaeは、体長1.0-1.5 mmとやや小さく、固着盤の鉤が約90 μmと大きいことで区別できる(写真2)。
その他の情報 元来は、日本、中国、台湾のウナギの寄生虫であったが、現在ではヨーロッパのヨーロッパウナギ(Anguilla anguilla)とアメリカのアメリカウナギ(Anguilla rostrata)でも寄生が確認されている。対策としては、0.3-0.5 ppmのトリクロルホンを養殖池に散布することが有効である。また、新しく魚を導入する前に池の水を抜いて乾燥させ、池底に残った虫卵を殺すことも効果的である(小川, 2004)。
参考文献 Buchmann, K. (1988): Temperature- dependent reproduction and survival of Pseudodactylogyrus bini (Monogenea) of the European eel (Anguilla anguilla). Parasitol. Res., 75, 162-164.

小川和夫 (2004): 単生虫病. 魚介類の感染症・寄生虫病(若林久嗣・室賀清邦編), 恒星社厚生閣, pp.353-379.

または

写真2.P. bini(左)とP. anguillae(右)の虫体。

写真1.P. anguillaeが多数寄生したウナギの鰓.

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