寄生虫名 Rhexanella verrucosa(タイノエ)
分類学 節足動物門、軟甲綱、等脚目
宿主名 マダイ(Pagrus major
病名 タイノエ症
寄生部位 口腔内
肉眼所見 口腔内に、通常雌雄一対の寄生虫が観察される(写真1, 2)。
寄生虫学 寄生性の甲殻類で、マダイの口腔内に寄生する。雌雄の全長はそれぞれ3-5 cmおよび1-1.5cmで、雌は腹側に大きな育房室を持つ(写真3)。口器で宿主に傷を付け、増生した組織を摂餌する。初期の虫体は精巣と卵巣の両方を備えているが、同一口腔内に寄生する2個体のうち片方は精巣を失い雌となる。もう一方は雄となり、生涯を通じて精巣と卵巣を保持するものの卵巣は成熟しない(Sanada, 1941)。
病理学 寄生部位に組織増生が見られるものの、致命的な影響はほとんどない。ただし、小型魚に寄生した場合には、虫体が口腔内で大きな空間を占めることや顎の骨格変形により摂餌が困難になるといわれる。
人体に対する影響 人間には寄生しないので、食品衛生上の問題はない。
診断法 口腔内に寄生している虫体は容易に肉眼で観察できる。
その他の情報 古くから天然魚への寄生が知られている寄生虫である。まれに養殖魚から見つかることもある。本症に対する対策は知られていない。
参考文献 Sanada, M. (1941): On sexuality in Cymothoidae, Isopoda I Rexana verrucosa Schoedte & Meinert parasitic in the buccal cavity of the porgy, Pagrosomus major (Temminck & Schlegel). J. Sci. Hiroshima Univ. Ser. B, Div. 1, 9, 209-217.

写真1.上顎にタイノエが寄生したマダイ。顎の変形も見られる。

(写真提供者:大谷智通)

写真2.解剖所見。タイノエのオス(左)とメス(右)

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写真3.タイノエ(メス)の腹側。育房室が顕著。