寄生虫名 | Salmincola spp.(ヤマメナガクビムシ類) |
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分類学 | 節足動物門、甲殻亜門、カイアシ亜綱、ウオジラミ目 |
宿主名 | ヤマメ(Oncorhynchus masou)、イワナ(Salvelinus pluvius)、イトウ(Hucho perryi) |
寄生部位 | 口腔壁、鰓腔壁 |
肉眼所見 | 口腔内や鰓腔壁に白色の虫体として見られる(写真1)。 |
寄生虫学 | 頭部にあるブラという器官(写真3)を宿主組織に打ち込んで固着寄生する。肉眼的に見られるのはすべて雌成虫で、後端に一対の長い卵嚢を持つ(写真2、4)。卵からコペポディド幼生で孵化し、すぐに魚に寄生してカリムス幼生になる。その後、成虫になるが、雄は成長せず矮雄として雌に超寄生する。ヤマメ・アマゴの鰓蓋内壁に寄生するのはヤマメナガクビムシ(Salmincola californiensis)、イワナの口腔壁に寄生するのはイワナナガクビムシ(Salmincola carpionis)、イトウの口腔壁に寄生するのはイトウナガクビムシ(Salmincola stellatus)である(Nagasawa and Urawa, 2002)。 |
病理学 | ブラが埋没した部分の組織が肥厚するものの、軽度寄生ではほとんど無害である。鰓弁の先端部に寄生した場合は寄生部位が欠損し、鰓腔寄生の場合は虫体と接触した部位の鰓弁が損傷するなどの影響がある(Nagasawa and Urawa, 2002; 長澤、2006)。また、ニジマスの産卵を抑制したという報告もある(Gall et al., 1972)。 |
人体に対する影響 | 人間には寄生しないので、食品衛生上の問題はない。 |
診断法 | 成虫の形態によって同定する。 |
その他の情報 | 水族館や養殖場のサケ科魚類に時折見られる寄生虫である。北米のサケ科魚養殖場では産業的に被害を与える場合があり、イベルメクチン等の駆虫薬や、ピンセットを使って直接抜き取る方法などの対策が検討されている(Roberts et al., 2004)。 |
参考文献 | Gall, G. A. E., E. L. McClendon and W. E. Schafer (1972): Evidence on the influence of the copepod (Salmincola californiensis) on the reproductive performance of a domesticated strain of rainbow trout
(Salmo gairdneri). Trans. Am. Fish. Soc., 101, 345-346. 長澤和也(2006):ヤマメナガクビムシ症。新魚病図鑑、緑書房、p. 45. Nagasawa, K. and S. Urawa (2002): Infection of Salmincola californiensis (Copepoda: Lernaeopodidae) on juvenile masu salmon (Oncorhynchus masou) from a stream in Hokkaido. Bull. Natl. Salmon Resources Center, 5, 7-12. Roberts, R. J., K. A. Johnson and M. T. Casten (2004): Control of Salmincola californiensis (Copepoda: Lernaeapodidae) in rainbow trout, Oncorhynchus mykiss (Walbaum): a clinical and histopathological study. J. Fish Dis., 27, 73-79. |
(写真提供者:粟倉輝彦(1,2,3)、浦和茂彦(4))
写真1.イトウの口内に寄生しているイトウナガクビムシ
(矢印)
または
写真4.ヤマメナガクビムシ。
写真3.イトウナガクビムシ頭部のブラ。
写真2.イトウナガクビムシの虫体。