写真3.サケの鰓に寄生するトリコジナのSEM像

写真2.サケの鰭に寄生しているトリコジナ

または

写真1.トリコジナが大量寄生したサケ稚魚の尾鰭

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(写真提供者:野村哲一)

寄生虫名 Trichodina spp.(トリコジナ)
分類学 繊毛虫門、少膜綱
宿主名 多くの淡水魚、海産魚
病名 トリコジナ症
寄生部位 体表、鰭、鰓
肉眼所見 多くの場合、外観的には無症状である。顕微鏡レベルでは、丸い車輪状の虫体が観察される(写真12)。
寄生虫学 虫体は丸いドーム型で、直径数10100 μm(写真3)。付着盤中央の歯状体環と周囲の繊毛によって魚に付着寄生する。上面に開く口から宿主細胞の残渣や細菌を取り込み、二分裂で増殖する(Lom and Dykova, 1992; 小川, 2004)。コイやキンギョに寄生するT. reticulata、サケ科魚に寄生するT. truttaeなどが知られている。
病理学 何らかの原因で生体防御能が低下した時に大繁殖することから、条件性病原体とされている。大量寄生した場合は、粘液が分泌されて上皮が損傷を受ける。T. truttaeでは、実験的にサケ稚魚への大量寄生が起こり累積死亡率が56%に達したという(Urawa, 1992)。タイセイヨウダラ(Gadus morhua)においては、T. murmanicaの寄生により上皮と鰭の「びらん」、尾部の壊死を呈し、大量死した事例がある(Khan, 2004)。
人体に対する影響 人間には寄生しないので、食品衛生上の問題はない。
診断法 塗銀染色標本を作製して、歯状体の数や形状によって同定する。
参考文献 Khan, R. A. (2004): Disease outbreaks and mass mortality in cultured Atlantic cod, Gadus morhua L., associated with Trichodina murmanica (Ciliophora). J. Fish Dis., 27, 181-184.

Lom, J and I. Dykova (1992) Protozoan Parasites of Fishes, Developments in Aquaculture and Fisheries Science, 26, Elsevier, pp. 315.

Urawa, S. (1992): Trichodina truttae Mueller, 1937 (Ciliophora: Peritrichida) on juvenile chum salmon (Oncorhynchus keta): pathogenicity and host-parasite interactions. Fish Pathol., 27, 29-37.

小川和夫 (2004): 原虫病. 魚介類の感染症・寄生虫病(若林久嗣・室賀清邦編), 恒星社厚生閣, pp.285-338.