寄生虫名 Zeuxapta japonica(ゼウクサプタ・ヤポニカ)
分類学 扁形動物門、単生綱、多後吸盤目
宿主名 カンパチ(Seriola dumerili)、ヒラマサ(Seriola lalandi
病名 ゼウクサプタ症
寄生部位 鰓弁
肉眼所見 外観上、特徴的な症状はない。剖検的には、最大で9 mm程度の虫体が鰓弁上に付着しているのが見える。多数寄生の場合、吸血により鰓は褪色して貧血症状を示す。
寄生虫学 虫体は左右非対称だが、非対称性はブリエラムシほど極端ではない。成虫の体長は4-9 mm。虫体の後端部にある左右2列の把握器で宿主の鰓薄板を掴んで寄生する。2列の把握器は、片方が45-47個で、もう一方は39-42個と数が少なく、把握器自体も若干小さい。雌雄同体で、成虫は一端に長いフィラメントが付いた鶏卵型の虫卵を産む。虫卵はフィラメントによって互いに絡まり合い長い塊となるため、養殖生け簀の網地に引っかかりやすい。なお、本寄生虫はオーストラリアではZ. seriolaeのシノニムであるとされている。しかし、形態的に差がみられるため、別種である可能性が高い。
病理学 病理組織学的には、寄生による宿主鰓組織への障害は認められない(Anshary and Ogawa, 2001)。ただし、大量寄生すると、吸血により鰓が貧血症状を呈する。慢性的な寄生により、摂餌が低下して痩せる場合もある。
人体に対する影響 人間には寄生しないので、食品衛生上の問題はない。
診断法 虫体の形態学的な観察を行う。カンパチでは稚魚期にのみHeteraxine heterocercaの本虫の寄生が見られるが、把握器の列を観察することで両種の区別が可能である。すなわち、H. heterocerca2列の把握器は、24-32個と3-14個というように、左右の非対称性が著しい。
その他の情報 細長いフィラメントを持つ卵が生け簀の網地に絡まりやすいため、定期的な網替えによる虫卵の駆除が推奨される。
参考文献 Anshary, H. and K. Ogawa (2001): Microhabitats and mode of attachment of Neoheterobothrium hirame, a monogenean parasite of Japanese flounder. Fish Pathol., 36, 21-26.

写真1.Z. japonicaの虫体

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