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写真1.イワガニの腹部に寄生しているフクロムシ

または

(写真提供者:小川和夫)

寄生虫名 Unidentified rhizocephalan(フクロムシ類)
分類学 節足動物門、甲殻亜門、顎脚綱、蔓脚亜綱、根頭目
宿主名 イワガニ(Pachygrapsus crassipes
寄生部位 カニ類の腹部
肉眼所見 カニの腹部(いわゆるフンドシの部分)に卵を抱くようにソラマメ状の虫体が観察できる(写真1)。
寄生虫学 フジツボ類に近縁の甲殻類であるが、体節や付属肢はなく、寄生に特殊化して特異な形態をしている。カニの腹部に付いている袋状の体外部(エクステルナ)と、宿主体内に樹根状に発達している体内部(インテルナ)から成る。エクステルナの内部は卵巣で占められ、そこで孵化したノープリウスあるいはキプリス幼生の雌が水中を遊泳して新たな宿主に付着する。体内に侵入して腫瘍状の細胞塊となりインテルナを伸ばした後、宿主の腹部にエクステルナが出現する。その後、雄のキプリス幼生がエクステルナに入り、受精する(高橋、2004)。
病理学 寄生去勢を起こし、宿主の繁殖能力を失わせる。雄では、その腹部が雌のように広くなったりハサミが小さくなったりなど形態的にも雌化する(高橋、2004)。
人体に対する影響 人間には寄生しないので、食品衛生上の問題はない。
診断法 カニの腹部に虫体のエクステルナが観察できる。
その他の情報 フクロムシが受精卵で満たされると、宿主カニはエクステルナの表面をクリーニングしたり、幼生放出時にはそれを補助するなど、行動が操作されると言われている(Takahashi et al., 1997)。
参考文献

高橋 徹(2004):性をあやつる寄生虫、フクロムシ。「フィールドの寄生虫学(長澤和也編)」、東海大学出版会、神奈川、pp. 81-94.

Takahashi, T., A. Iwashige and S. Matsuura (1997): Behavioral manipulation of the shore crab, Hemigrapsusu sanguineus by the rhizocephalan barnacle, Sacculina polygenea. Crust. Res., 26, 153-161.