病原体名 | Atypical Aeromonas salmonicida(非定形エロモナス・サルモニシダ) |
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分類学 | グラム陰性、短桿菌 |
宿主名 | キンギョ(Carassius auratus)、コイ(Cyprinus carpio)、フナ類(Carassius spp.) |
病名 | 穴あき病 |
肉眼所見 | 体表に潰瘍性の病巣が生じるのが特徴的で、その症状から穴あき病と呼ばれる(写真1)。内臓諸器官には肉眼的な異常は認められない。 |
細菌学 | 原因菌は、非運動性のグラム陰性短桿菌であり、オキソリン酸やテトラサイクリンに感受性を有する。 |
病理学 | 感染初期には1から数枚の鱗が発赤する。その後、鱗が脱落して壊死した真皮が露出する。続いて、その真皮が剥離して筋肉が露出するが、さらに深部に患部が進行することはない(若林, 2004)。 |
人体に対する影響 | 人間には感染しないので、食品衛生上の問題はない。 |
診断法 | 体表の患部から分離した菌を、性状検査で同定する。また、抗血清を用いた蛍光抗体法や共同凝集試験などの血清学的診断も行われる。 |
その他の情報 | 本病は、1970年代に入ってコイ科を主とする温水性の淡水魚に見られるようになった。1973年から1975年をピークとして次第に減少し、現在ではほとんど見られなくなった。本病の流行期は春と秋で、夏に発生することは少ない。晩春から初夏に変えて発生する場合は、水温が上昇するにつれて自然治癒することが多い(若林, 2004)。対策としては、飼育水の塩分濃度を0.6-0.7%に設定した上で水温を28-30℃にすると治癒する。また、オキソリン酸などの抗菌剤による薬浴が有効である。なお、穴あき病に類似した症状を示す疾病がニシキゴイで知られており、新穴あき病と呼ばれている。いずれも原因菌は非定型のAeromonas salmonicidaであるが菌型が異なり、薬剤感受性などに相違がある。 |
参考文献 | 若林久嗣 (2004): 非定型Aeromonas salmonicida感染症(Atypical Aeromonas salmonicida infection). 魚介類の感染症・寄生虫病(若林久嗣・室賀清邦編), 恒星社厚生閣, pp.146-150. |
または
写真1.体側に穴が開いた罹病フナ
(写真提供者:桃山和夫)