病原体名 | Argulus japonicus(チョウ) |
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分類学 | 節足動物門、顎脚綱、鰓尾目 |
宿主名 | コイ(Cyprinus carpio)、キンギョ(Carassius auratus) |
病名 | チョウ症 |
寄生部位 | 体表 |
肉眼所見 | 体表に、大きさ1 cm弱の虫体が観察される(写真1)。寄生部位には炎症および出血が見られる。 |
寄生虫学 | 寄生性の甲殻類で、温水性淡水魚の体表に寄生する。体は扁平で円形、雌の体長は8-9 mm、雄では6 mmくらい(写真2)。かぎ爪状の第1触角と、吸盤状の第2小顎で宿主の表面に付着する。胸部に良く発達した4対の遊泳脚を持ち、魚からいったん離れて別の魚に再び寄生することもできる。雌は、産卵に際して宿主から離脱し、池の壁面や水草の上に卵塊を生み付ける。虫卵は25℃では15日程度で孵化し、コペポディドとしてすぐに魚体表面に寄生する。寄生後、脱皮を繰り返して成虫となり産卵を始めるまで、20-25℃で3‐5週を要する(木村、1970)。 |
病理学 | 吻状の口の直前にある刺針を宿主に突き刺し、その基部にある毒腺から毒液を注入することにより、漏出した血液を摂取する。そのため、寄生を受けた皮膚は糜爛し、出血する。大量寄生を受けた小型魚では死亡することもある。 |
人体に対する影響 | 人間には感染しないので、食品衛生上の問題はない。 |
診断法 | 日本には、チョウと近縁種のチョウモドキ(Argulus coregoni)も生息する。チョウモドキが冷水性淡水魚に寄生するのに対し、チョウは温水性の淡水魚に寄生する。両種は、チョウモドキの方がやや大型であり腹部の先端が尖っているのに対して、チョウの腹部が鈍端であることで区別できる。これまでに、両種が混合寄生した例は知られていない(小川, 2004)。 |
その他の情報 | 対策として、トリクロルホンの散布が有効であるが、卵には効かないので、繰り返し投薬する必要がある。 |
参考文献 | 木村関男(1970):淡水魚に寄生するチョウ(Argulus japonicus)の繁殖に関する2,3の生態。淡水研報, 20, 109-126. 小川和夫 (2004): 大型寄生虫病. 魚介類の感染症・寄生虫病(若林久嗣・室賀清邦編), 恒星社厚生閣, pp.381-405. |
または
(写真提供:吉澤圭子)
写真1.体表とくに頭部に多数のチョウ(矢印)の寄生を受けたキンギョ。
写真2.チョウの虫体(オス)