ブラウザの「戻る」で前頁へ

または

(写真提供者:山田和雄(1)、小川和夫(2))

写真1.Bothriocephalus寄生がみられるコイ

写真2.B. acheilognathiの頭節。1対の吸溝がみられる。

寄生虫名 Bothriocephalus acheilognathi
分類学 扁形動物門、条虫綱、擬葉目
宿主名 コイ(Cyprinus carpio)その他のコイ科魚
病名 吸頭条虫
寄生部位 腸管内
肉眼所見 外観的な症状はない。剖検すると、白い紐状の虫体が腸管から出てくる(写真1)。
寄生虫学 虫体は頭節と多数の体節部から成り、幅約4 mm、長さ数十cmに達する(中島・江草、1974a)。頭節は腸管に吸着するための1対の吸溝を有する(写真2)。各体節には生殖器があり、頸部から離れるほど成熟が進んで、虫卵を産出する。虫卵は腸管を通して水中に排出され、孵化した幼生(コラキジウム)が中間宿主のケンミジンコ類に取り込まれて感染幼虫(プロセルコイド)となり、それをコイが摂取すると消化管内で成虫になる。
病理学 腸絨毛が欠損して粘膜固有層が露出し、出血や水腫等が観察される。しかしながら、そのような病変は局所的なものと考えられ、個体として成長阻害や死亡はみられない(中島・江草、1974b)。
人体に対する影響 人間には寄生しないので、食品衛生上の問題はない。
診断法 魚類の腸管内に寄生する虫体は、肉眼で容易に観察できる。顕微鏡で吸溝を有する頭節の構造を確認する。
その他の情報 近年、観賞魚の移動に伴って本寄生虫がヨーロッパやアメリカに分布を広げ、感受性の高い海外のコイ科魚に寄生して問題となっている。
参考文献 中島健次・江草周三(1974a):養殖マゴイの腸管内に寄生する吸頭条虫−I.成虫の形態および種の同定。魚病研究、931-39.

中島健次・江草周三(1974b):養殖マゴイの腸管内に寄生する吸頭条虫−II.罹虫状況および害性。魚病研究、940-45.