寄生虫名 | Echinorhynchus gadi(タラコウトウチュウ) |
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分類学 | 鉤頭動物門、古鉤頭虫綱、鉤頭虫目 |
宿主名 | スケトウダラ(Theragra chalcogramma)、マダラ(Gadus macrocephalus)、マガレイ(Pseudopleuronectes herzensteini)、サクラマス(Oncorhynchus masou)、タイセイヨウマダラ(Gadus morhua)、ハドック(Melanogrammus aeglefinus) |
寄生部位 | 腸管内 |
肉眼所見 | 外観的な異常は見られない。剖検的には、1-2 cm程度のオレンジ色の虫体が直腸内に寄生しているのが観察できる。(写真1)。 |
寄生虫学 | 虫体は吻部、頸部、胴部からなる。宿主の腸管組織に吻部から頸部までを穿入させて寄生する。雌雄異体で、雌は内部に胚を有する楕円形の卵を産む。虫卵は中間宿主の体内で孵化、成長し、被嚢した幼虫(シストアカンス)となる。一般に魚類を終宿主とする鉤頭虫は甲殻類を中間宿主とするが、E. gadiの場合は端脚類のワレカラ類やヨコエビ類が中間宿主となることが報告されている(Marcogliese, 1994)。なお、E. gadiは遺伝的に隔離された複数の同胞種からなるという報告もある(Wayland et al., 2005)。 |
病理学 | 病害性は低いとされるが、詳細に調べられてはいない。 |
人体に対する影響 | 魚類を終宿主とするので、人間には寄生しない。 |
診断法 | 虫体を取り出してスライドグラス上に乗せ、カバーグラスをかけて圧平すると、吻部の特徴的な構造が観察できる(写真2)。 |
その他の情報 | 基本的に天然魚の寄生虫である。しかしながら、近年タラ類の養殖が進められているヨーロッパなどでは、潜在的な病害生物として注目されている。また、天然海域でのタラ類の系群調査における生物標識としても利用されている(Khan and Tuck, 1995)。 |
参考文献 | Khan, R. A. and C.
Tuck (1995): Parasites as biological indicators of stocks of Atlantic cod (Gadus morhua) off Newfoundland, Canada. Can. J. Fish. Aquat. Sci., 52, suppl., 195-201. Marcogliese, D. J. (1994): Aeginina longicornis (Amphipoda: Caprellidea), new intermediate host for Echinorhynchus gadi (Acanthocephala: Echinorhynchidae). J. Parasitol., 80, 1043-1045. Wayland, M. T., Gibson, D. I. And Sommerville, C. (2005): Morphometric discrimination of two allozymically diagnosed sibling species of the Echinorhynchus gadi Zoega in Muller complex (Acanthocephala) in the North Sea. Syst. Parasitol., 60, 139-149. |
または
写真2.タラコウトウチュウの吻部。表面には細かい鉤が密生している。
写真1.スケトウダラの腸内にみられたタラコウトウチュウ。