寄生虫名 Parvatrema sp. (パルヴァトレマ属吸虫)
分類学 扁形動物門、吸虫綱、二生亜綱
宿主名 アサリ(Ruditapes philippinarum)を含む二枚貝類。Parvatrema duboisiは、アサリの他、ソトオリガイ(Laternula limicola)、ハナグモリガイ(Glauconome chinensis)、サクラガイ類(Tellina sp.)、イガイ科(Mytilus galloprovineulis)、マルスダレガイ科(Brachydontes minimus)にも寄生する。終宿主はカモ類を含む水鳥
病名 吸虫症
寄生部位 主に外套膜と蝶番周辺
肉眼所見 外套膜内に1mm程度の「真珠」様異物が観察される(写真1)。食べたときにジャリジャリして食味を損なうため、問題となることがある。
寄生虫学 中間宿主である二枚貝内部でメタセルカリアとして寄生する(写真2)。メタセルカリアは被囊しないが、宿主反応を誘起し、ゼラチン質もしくは石灰質に覆われて「真珠」状の異物を形成すると考えられる。アサリの実験感染から、ほ乳類(マウスとラット)体内で成虫(写真3)となることが分かっている。
病理学 石灰化し異物として二枚貝体内に存在する。宿主貝に致命的な影響は及ぼさないと考えられる。
人体に対する影響 人間に寄生する可能性もあるが、加熱調理すれば問題ない。
診断法 顕微鏡下での形態観察。メタセルカリアでの同定は困難であるため、実験感染等で成虫を得る必要がある。圧平した生体の観察と鉄ヘマトキシリン染色標本を用いて、詳細な形態を観察する。生活環も同定の一助となる。
その他の情報 日本では、過去に東京湾と浜名湖のアサリに寄生が確認されている。Ogata(1944)は、ラットを用いた感染実験により成虫を得て、形態観察によりこれをGymnophallus bursicolaに同定した。しかし、Endo and Hoshina(1974)の再検討により、本種はParvatrema duboisi(=Parvatrema timondavidi)に同定し直された。本種の寄生がアサリに石灰沈着(いわゆる「真珠」の形成)を引き起こすとの報告もある(志村ら, 1982)が、直接的な因果関係を明らかにするには至っていない。なお、外套膜に寄生するものと蝶番に寄生するものは別種の可能性もある。

参考文献




Ogata, T. (1944): On the morphology, ecology and life history of an Agamodistome parasitic in a bivalve, Paphia (Ruditapes) philippinarum (Adames et Reeve). Sci. Rep. Tokyo Bunrika Daigaku, Sec. B, 7, 1-24

Endo, T. and T. Hoshina (1974): Redescription and identification of a Gymnophallid trematode in a brackish water clam, Tapes (Ruditapes) Philippinaraum. Jap. J. Parasit., 23, 73-77.

志村 茂・良永知義・若林久嗣(
1982:浜名湖産のアサリに寄生するメタセルカリア2Parvatrema duboisiGymnophallidae)とProctoeces sp.Fellodistomidae)の形態と寄生状況.魚病研究,17, 187-194
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写真3.感染実験によりマウスから得られた成虫

写真2.アサリの外套膜から採取されたParvatrema sp.のメタセルカリア

写真1.アサリ体内から取り出された「真珠」様異物