写真2.G. kherulensisの虫体。鉤の存在によって、
三世代の虫体が確認できる。
寄生虫名 | Gyrodactylus spp.(ギロダクチルス) |
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分類学 | 扁形動物門、単生綱、単後吸盤目 |
宿主名 | コイ(Cyprinus carpio)、キンギョ(Carassius auratus)、アユ(Plecoglossus altivelis)、ニジマス(Oncorhynchus mykiss)、タイセイヨウサケ(Salmo salar)、ウナギ(Anguilla japonica)、トラフグ(Takifugu rubripes)など |
病名 | ギロダクチルス症 |
寄生部位 | 体表、鰭、鰓 |
肉眼所見 | 通常、外観症状はないが、大量寄生により摂餌不良や衰弱がみられたり、患部が出血することもある。 |
寄生虫学 | Dactylogyrusと似るが、眼点を持たないことと胎生であることで決定的に異なる。体中央部を子宮が占め、子宮内の仔虫がさらにその仔虫を宿しているため、「三代虫」と呼ばれる。体長は1 mm以下、後端の固着盤にある1対の鉤で宿主に懸着し、宿主の上皮組織を摂取する。胎生であるため、宿主を離脱した虫体は別の魚に直接伝播する。有害種として、ヨーロッパのタイセイヨウサケ等に寄生して問題となるG. salarisが最も有名であるが、その他、コイのG. kherulensis(体表、鰭), G. sprostonae(鰓)、キンギョのG. kobayashii(体表、鰭)、アユのG. japonicus(体表、鰭)、ニジマスのG. masu(体表、鰭、鰓)、トラフグのG. rubripedis(体表、鰭)などが知られている(小川, 2004)。 |
病理学 | アユでは体表粘液の異常分泌や出血斑が見られる。タイセイヨウサケでは体表の粘液細胞の密度が減少して上皮が薄くなる。 |
人体に対する影響 | 人間には寄生しないので、食品衛生上の問題はない。 |
診断法 | 虫体の圧平標本を作製して、形態学的な観察を行う。G. salarisにおいては、固着器の形態測定値(Shinn et al., 2000)や遺伝子による診断法(Cunningham et al., 1995)が提案されている。 |
その他の情報 | ノルウェーでは、1970年代に外国から侵入したG. salarisによって天然河川のタイセイヨウサケが大量死した。当時、河川に殺虫剤を撒いて生息する魚類を寄生虫ごと絶滅させることにより駆除したというドラスティックな事例が報告されている(Johnson and Jensen, 1991)。 |
参考文献 | Cunningham, C. O., D.
M. McGillivray, K. Mackenzie and W. T. Melvin (1995): Discrimination between Gyrodactylus salaris, G. derjavini and G. truttae) using restriction fragment length polymorphisms and an
oligonucleotide probe within the small subunit ribosomal RNA gene. Parasitology, 111, 87-94. Johnson, B. O. and A. J. Jensen (1991): The Gyrodactylus story in Norway. Aquaculture, 98, 289-302. 小川和夫 (2004): 単生虫病. 魚介類の感染症・寄生虫病(若林久嗣・室賀清邦編), 恒星社厚生閣, pp.353-379. Shinn, A. P., J. W. Kay and C. Sommerville (2000): The use of statistical classifiers for the discrimination of species of the genus Gyroductylus (Monogenea) parasitizing salmonids. Parasitology, 120, 261-269. |
写真1.Gyrodactylusが多数寄生したコイの体表
(写真提供者:小川和夫)
または