寄生虫名 | Henneguya pagri(ヘネガヤ・パグリ) |
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分類学 | ミクソゾア門、粘液胞子虫綱、双殻目 |
宿主名 | マダイ(Pagrus major) |
病名 | 心臓ヘネガヤ症 |
寄生部位 | 心臓 |
肉眼所見 | 病魚は鰓と内臓の貧血、囲心腔内の出血(写真1)、動脈球の肥大を呈する(写真2)。 |
寄生虫学 | 鰓を顕微鏡下で観察すると、大量の胞子が鰓弁毛細血管内に充満している(写真3)。胞子は卵形で2個の極嚢を持ち、尾端突起を有する。胞子体の長さ9.9-11.9(平均10.5)mm、幅6.4-8.4(7.5)mm、厚さ5.4-6.4(5.9)mm。極嚢の長さ2.5-4.0(3.1)mm、幅1.5-2.0(1.6)mm。尾端突起の長さ24.8-34.7(平均29.6)mm。生活環は不明。中間宿主の介在が推測される。 |
病理学 | 本寄生虫は心臓の動脈球組織内で胞子を形成後、大量の胞子が鰓弁内に流入して毛細血管の閉塞、うっ血、鰓弁の棍棒化、鰓弁上皮の剥離等をもたらす(写真4)。また、心筋組織の崩壊など、心臓における病変も著しい(Yokoyama et al., 2005)。 |
人体に対する影響 | 人間には寄生しないので、食品衛生上の問題はない。 |
診断法 | 鰓弁をつぶしてウェットマウントで胞子を確認する。近縁種のH. lateorabracisとは、尾端突起の長さ、および尾端突起の先端から糸状の構造物が伸張している点で区別できる。標本はスメアにしてチール・ネルゼン染色(抗酸菌染色)する。 |
その他の情報 | 本症は、主に0歳の8-11月に発生する。有効な治療法はないが、発症時には給餌量を少なめにし、良好な飼育環境を保つことで酸欠による死亡を抑えれば、胞子の排出とともに徐々に回復する。 |
参考文献 | Yokoyama, H., N. Itoh and S. Tanaka (2005): Henneguya pagri n. sp. (Myxozoa: Myxosporea) causing cardiac henneguyosis in red sea bream, Pagrus major (Temminck &Schlegel). J. Fish Dis., 28, 479-487. |
写真4.鰓弁の棍棒化、うっ血が顕著
写真3.H. pagri の胞子
写真2.肥大した動脈球
写真1.マダイ罹患魚。鰓の貧血と囲心腔内の出血