写真2.サクラマスの鰓に寄生しているイクチオボド(矢印)
または
(写真提供者:浦和茂彦、粟倉輝彦)
写真3.I. necatorの虫体(ウェットマウント)
写真1.イクチオボドの寄生を受けたサケ稚魚の体表に
みられる点状出血。
寄生虫名 | Ichthyobodo necator(イクチオボド・ネカトール) |
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分類学 | 肉質鞭毛虫門、イクチオボド科 |
宿主名 | サケ科魚類 |
病名 | イクチオボド症 |
寄生部位 | 体表、鰭、鰓 |
肉眼所見 | 重篤寄生により摂食不良となり、体表に点状出血が認められる(写真1)。光学顕微鏡により、外部寄生している虫体が観察される(写真2)。 |
寄生虫学 | 虫体は紡錘形で、体長8〜13 μm(写真3)。付着盤によって宿主の上皮細胞に固着し、細胞口突起を宿主内に伸ばして摂餌する(Lom and Dykova, 1992; 小川, 2004)。宿主を離脱すると円形になり、通常2本(まれに4本)の長さが異なる鞭毛で遊泳する。過去、多くの淡水魚や海産魚に寄生する種類が'I. necator'として記載されてきたが、感染実験や遺伝子解析により別種であることが示されている(Urawa et al., 1998; Todal et al., 2004; Isaksen et al., 2007)。 |
病理学 | 上皮細胞が壊死し、表皮が剥離したり患部から出血する。鰓では鰓薄板が癒着する。 |
人体に対する影響 | 人間には寄生しないので、食品衛生上の問題はない。 |
診断法 | 患部のウエットマウント標本により、虫体の鞭毛を確認する。詳細な種同定には、Diff-Quik染色したスメア標本の形態観察とSSU rDNA解析の併用が必要である(Isaksen et al., 2007)。 |
その他の情報 | 薬事法の改正に伴い、ホルマリンの代替薬として、緑茶抽出物およびその構成成分であるカテキンの1種を用いた駆虫効果が検討されている(Suzuki et al., 2006)。 |
参考文献 | Isaksen, T. E., E.
Karlsbakk and A. Nylund (2007): Ichthyobodo
hippoglossi n. sp. (Kinetoplastea: Prokinetoplastida: Ichthyobodonidae fam.
nov.), an ectoparasitic flagellate infecting farmed Atlantic halibut Hippoglossus hippoglossus. Dis. Aquat. Org., 73, 207-217. Lom, J and I. Dykova (1992) Protozoan Parasites of Fishes, Developments in Aquaculture and Fisheries Science, 26, Elsevier, pp. 315. 小川和夫 (2004): 原虫病. 魚介類の感染症・寄生虫病(若林久嗣・室賀清邦編), 恒星社厚生閣, pp.285-338. Suzuki, K., N. Misaka and D. K. Sakai (2006): Efficacy of green tea extract on removal of the ectoparasitic flagellate Ichthyobodo necator from chum salmon, Oncorhynchus keta, and masu salmon, O. masou. Aquaculture, 259, 17-27. Todal, J. A., E. Karlsbakk, T. E. Isaksen, H. Plarre, S. Urawa, A. Mouton, E. Hoel, C. W. R. Koren and A. Nylund (2004): Ichthyobodo necator (Kinetoplastida) ? a complex of sibling species. Dis. Aquat. Org., 58, 9-16. Urawa, S., N, Ueki and E. Karlsbakk (1998): A review of Ichthyobodo infection in marine fishes. Fish Pathol., 33, 311-320. |