寄生虫名 | Kudoa iwatai |
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分類学 | ミクソゾア門、粘液胞子虫綱、多殻目 |
宿主名 | マダイ(Pagrus major)、イシガキダイ(Oplegnathus punctatus)、クロダイ(Acanthopagrus schlegelii)、ブリ(Seriola quinqueradiata)、サワラ(Scomberomorus niphonius)、ヨーロッパヘダイ(Sparus aurata)、ヨーロッパスズキ(Dicentrarchus labrax)、ボラ(Mugil cephalus)。その他、ハマフエフキ(Lethrinus nebulosus)など紅海の天然魚10種 |
病名 | 筋肉クドア症 |
寄生部位 | 体側筋肉。ただし紅海の種類は、脳、眼、腸管、卵巣などにも寄生する(Diamant et al., 2005)。 |
肉眼所見 | 1から数 mmの白色球形シストが形成される(写真1)。宿主魚に致命的な影響は及ぼさない。 |
寄生虫学 | シストの内部で多数の胞子が産生される(写真2)。胞子は側面観で巾着形。径9.7-10.7 μm、長さ6.7-8.7 μm。4個の極嚢の長さ3.8-4.5 μm。生活環は不明。無脊椎動物の宿主が介在すると推測される。 |
病理学 | 線維性結合組織に被包されてシストを形成する。筋肉融解は起こらない。 |
人体に対する影響 | 人間には寄生しないので、食品衛生上の問題はない。 |
診断法 | シストをつぶしてウェットマウントで胞子を確認する。近縁種のKudoa amamiensisとは、胞子のサイズと形態で識別できる(江草,1986)。標本はスメアにしてギムザ染色またはディフ・クイック染色する。 |
その他の情報 | 1982年、宮崎県の養殖イシガキダイと鹿児島県の養殖マダイに初めて発見された当時、奄美・沖縄で問題となっていたKudoa amamiensisが南九州に伝播したのではないかと危惧されたが、形態学的な観察により別種であることが判明した(江草・塩満、1983)。なお1尾あたりに形成されるシスト数は、奄美クドア症に比べると、あまり多くない(杉山ら、1999)。本疾病を防除するのに有効な対策はない。 |
参考文献 | Diamant, A., M. Ucko, I. Paperna, A. Colorni and
A. Lipshitz (2005): Kudoa iwatai (Myxosporea: Multivalvulida) in wild and cultured fish in the Red Sea:
Redescription and molecular phylogeny. J. Parasitol., 91,
1175-1189. 江草周三(1986):多殻目粘液胞子虫とくにクドア類について.魚病研究,21, 261-274. 江草周三・塩満捷夫(1983):マダイとイシガキダイの体側筋寄生クドアおよびトラフグの囲心腔と心臓寄生クドア.魚病研究,18, 163-171. 杉山昭博・横山 博・小川和夫(1999):沖縄県内における奄美クドア症の疫学的調査.魚病研究,34,39-43. |
または
写真2.Kudoa iwataiの胞子
(写真提供者:水野かおり)
写真1.マダイ筋肉に見られるKudoa iwataiのシスト