寄生虫名 Kudoa megacapsula(クドア・メガカプスラ)
分類学 ミクソゾア門、粘液胞子虫綱、多殻目
宿主名 アカカマス(Sphyraena pinguis)、ブリ(Seriola quinqueradiata)、シイラ(Coryphaena hippurus
病名 筋肉クドア症、ジェリーミート
寄生部位 体側筋肉
肉眼所見 アカカマスとシイラの場合は、筋肉がジェリー状に溶解する(写真1:アカカマス)。一方、ブリでは長さ2-3 mmで繊維状またはゴマ粒状の黒いシストが無数に形成される(写真2)。宿主魚に致命的な影響は及ぼさない。
寄生虫学 筋肉線維内で発育し、多数の胞子が産生される(写真3:ブリ組織)。胞子は十字型で、4本の突起と1個の大極嚢および3個の小極嚢を有する(写真4)。胞子のサイズは40.0 (30.3-44.7)×30.9 (25.6-34.9) μm、長さ13.4  (9.3-15.4) μm大極嚢の長さ12.7 (11.7-14.2) μm、小極嚢の長さ2.8 (1.5-4.4) μm。生活環は不明。
病理学 筋細胞内で発育し胞子形成するが、その後の宿主反応は魚種により異なる。アカカマスでは魚の死後、筋線維が崩壊し、寄生虫由来の酵素により周辺組織の融解が起こる。ブリでは、魚が生きている間に宿主由来の結合組織に被包され色素沈着および肉芽腫性炎症を呈する。
人体に対する影響 人間には寄生しないので、食品衛生上の問題はない。また、融解した魚肉がなんらかの毒性を持つという報告もない。
診断法 筋肉組織をつぶしてウェットマウントで胞子を確認する。非常に大きな極嚢と翼のような突起を持つため、形態観察による種の同定は容易である(Yokoyama & Itoh, 2005; Yokoyama et al.2006)。ジェリー化が激しい場合または黒いシストの変性が進んでいる場合は、検出が困難な場合もあるが、大極嚢のみ残存して見られることもある。標本はスメアにしてギムザ染色またはディフ・クイック染色する。
その他の情報 中国産アカカマスを輸入して干物に加工する過程で筋肉が融解し、問題となったYokoyama & Itoh, 2005。ブリでは、韓国産の種苗を用いて養殖した1歳魚にのみ見られている(Yokoyama et al.2006。これらの状況証拠から、中国および韓国から入ってきた寄生虫であることが強く示唆されているが、日本沿岸に分布しているかどうかははっきりしない。なお、本疾病を防除するのに有効な対策はない。
参考文献 Yokoyama, H. and N. Itoh (2005): Two multivalvulid myxozoans causing postmortem myoliquefaction: Kudoa megacapsula n. sp. from red barracuda (Sphyraena pinguis) and Kudoa thyrsites from splendid alfonso (Beryx splendens). J. Parasitol., 91, 1132-1137.

Yokoyama, H., T. Yanagida and I. Takemaru (2006): The first record of Kudoa megacapsula (Myxozoa: Multivalvulida) from farmed yellowtail Seriola quinqueradiata originating from wild seedlings in South Korea. Fish Pathol., 41, 159-163.

写真4.K. megacapsulaの胞子

写真3.ブリ筋線維内で発育するK. megacapsula

写真2.黒いシストが形成されたブリの筋肉

写真1.筋肉融解を呈したアカカマス筋肉


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