寄生虫名 | Kudoa musculoliquefaciens (クドア・マスキュロリケファシエンス) |
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分類学 | ミクソゾア門、粘液胞子虫綱、多殻目 |
宿主名 | メカジキ(Xiphias gladius)、ホッケ(Pleurogrammus azonus) |
病名 | 筋肉クドア症、ジェリーミート |
寄生部位 | 体側筋肉 |
肉眼所見 | 魚を収穫後、筋肉がジェリー状に溶解する(写真1:ホッケ)。宿主魚に致命的な影響は及ぼさない。 |
寄生虫学 | 筋肉線維内で発育し、多数の胞子が産生される。胞子は上面観で角の丸い四辺形(写真2)。径7.42-9.94 μm、長さ5.32-7.28 μm。4個の極嚢の長さは1.68〜2.80 μm。生活環は不明。無脊椎動物の宿主が介在すると推測される。 |
病理学 | 魚の死後、筋線維が崩壊して、寄生虫由来の酵素により周辺組織の融解が始まる。 |
人体に対する影響 | 人間には寄生しないので、食品衛生上の問題はない。また、融解した魚肉がなんらかの毒性を持つという報告もない。 |
診断法 | 筋肉組織をつぶしてウェットマウントで胞子を確認するが、ジェリー化が激しいサンプルの場合は検出が困難な場合もある。標本はスメアにしてギムザ染色またはディフ・クイック染色する。 |
その他の情報 | 1953年の夏、気仙沼で漁獲されたメカジキに初めて見出され、Chloromyxum musculoliquefaciensとして記載されたが、その後、Kudoa属に転属された(江草、1986;Matsumoto, 1954)。最近、ベーリング海域で漁獲されたホッケを加工する過程でジェリーミートが問題となり、形態学的な観察の結果、K. musculoliquefaciensに同定された。しかし、本当にメカジキ由来のものと同一であるかは、遺伝子レベルの比較が必要である。なお、本疾病を防除するのに有効な対策はない。 |
参考文献 | 江草周三(1986):多殻目粘液胞子虫とくにクドア類について.魚病研究,21, 261-274. Matsumoto, K. (1954): On the two new myxosporidia, Chloromyxum musculoliquefaciens sp. nov. and Neochloromyxum cruciformum gen. et ap. Nov., from the jellied muscle of swordfish, Xiphias gladius Linne, and common Japanese sea-bass, Lateolabrax japonicus (Temminck et Schlegel). Bull. Jap. Soc. Sci. Fish., 20, 469-478, Pl. 1. |
写真2.K. musculoliquefaciensの胞子
写真1.筋肉融解を呈したホッケの筋肉