写真1.Kudoa neothunniの胞子(ディフ・クイック染色)

寄生虫名 Kudoa neothunni(クドア・ネオチュニ)
分類学 ミクソゾア門、粘液胞子虫綱、多殻目
宿主名 キハダマグロ(Thunnus albacares)、メバチマグロ(Thunnus obesus)、クロマグロ(Thunnus orientalis
病名 ジェリーミート
寄生部位 体側筋肉
肉眼所見 外観的には異常は見られない。剖検的には、体側筋組織の軟化、いわゆるジェリーミートが観察される。初期には、米粒大でやや白みを帯びた斑点が広範囲にわたって散在する。その後組織のジェリー化が進行すると、ほとんど全ての筋肉が流動状になる(小長谷, 1975)。
寄生虫学 患部には多数の胞子が観察される(写真1)。胞子は6個の極嚢を持ち、径が平均11.09.1-13.0μm、長さが平均6.25.3-7.3μm。生活環は不明。中間宿主の介在が推測される。
病理学 K. neothunniが産生するプロテアーゼが、周辺組織を破壊しながら拡散して、その部分の組織を液化させると考えられている(小長谷, 1982)。このような筋組織の崩壊は漁獲直後には見られず、魚の死後、時間の経過と共に症状が進行していく。
人体に対する影響 人間には寄生しないので、食品衛生上の問題はない。
診断法 ジェリー化した筋肉組織をつぶし、ウェットマウントで胞子を確認する。標本はスメアにしてギムザ染色またはディフ・クイック染色する。
その他の情報 本症は俗に「アズキ」とも呼ばれるが、これは初期の段階でアズキ状の穴ができることに由来している。本虫は、6個の胞子殻と極嚢を持つことから、新属新種のHexacapsula neothunni として記載された(Arai and Matsumoto, 1953)。しかし、その後の分子系統学的解析によってHexacapsula属は削除され、本種はKudoa属に転属された(Whipps et al., 2004)。本疾病を防除するのに有効な対策はない。
参考文献 Arai, Y. and K. Matsumoto (1953): On a new sporozoa, Hexacapsula neothunni gen. et sp. nov., from the muscle of yellowfin tuna, Neothunnus macropterus. Bull. Japan. Soc. Sci. Fish., 18, 293-299.

小長谷史郎 (1975): 魚のジェリーミート. さかな(東海水研業績C集), 15, 32-39.

小長谷史郎 (1982): キハダマグロ・ジェリーミートの組織学的観察. 東海水研報, 106, 55-75.

Whipps, C. M., G. Grossl, R. D. Adlard, H. Yokoyama, M. S. Bryant, B. L. Munday and M. L. Kent (2004): Phylogeny of the Multivalvulidae (Myxozoa: Myxosporea) based on comparative ribosomal DNA sequence analysis. J. Parasitol., 90, 618-622.

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