寄生虫名 Kudoa yasunagai(安永クドア)
分類学 ミクソゾア門、粘液胞子虫綱、多殻目
宿主名 ブリ(Seriola quinqueradiata)、マダイ(Pagrus major)、トラフグ(Takifugu rubripes)、ヒラメ(Paralichthys olivaceus)、スズキ(Lateolabrax japonicus)、イシダイ(Oplegnathus fasciatus)、クロマグロ(Thunnus orientalis)、ゴンズイ(Plotosus lineatus
病名 脳粘液胞子虫症
寄生部位
肉眼所見 罹病魚は体を屈曲させ、旋回するような特徴ある遊泳を示す。ブリの場合、体躯が湾曲する場合もある(写真1)。脳周囲に小球状の白色シストが見られる(写真2)。
寄生虫学 シストの内部で多数の胞子が産生される(写真3)。胞子は6-8(通常7個の極嚢を持ち、長さ平均6.2 μm幅平均11.7 μm、厚さ平均8.3 μm。極嚢の長さ平均3.6 μm、幅平均2.4 μm。生活環は不明。中間宿主の介在が推測される。
病理学 宿主由来の組織で被嚢されたシストが、主に脳の表面と組織内、および延髄や脊髄前部にも観察される。罹病魚の異常遊泳と寄生部位との関係は明らかにされていない。
人体に対する影響 人間には寄生しないので、食品衛生上の問題はない。
診断法 シストをつぶしてウェットマウントで胞子を確認する。同じく海産魚の脳に寄生する粘液胞子虫Myxobolus acanthogobii2個の極嚢を持つ双殻目であり、本種とは容易に区別が付く。標本はスメアにしてギムザ染色またはディフ・クイック染色する。
その他の情報 1980年に長崎県の養殖スズキと養殖イシダイで異常遊泳を伴う死亡が発生し、罹病魚の脳から本種の胞子が確認された(安永ら, 1981)。胞子が通常7個の胞子殻と極嚢を持つことから、新科(Septemcapusulidae)新属、新種のSeptemcapsula yasunagaiとして記載された(Hsieh and Chen, 1984)。しかし、その後の分子系統学的解析によってSeptemcapsulidae科およびSeptemcapusula属は削除され、本種はKudoa属に転属された(Whipps et al., 2004)。本疾病を防除するのに有効な対策はない。
参考文献 Arthur, J. R. and S. Lumanlan-Mayo (1997): Checklist of the parasites of fishes of the Philippines. FAO Fisheries Technical Paper, 369, 102 p. FAO, Rome.

江草周三(
1986):多殻目粘液胞子虫とくにクドア類について.魚病研究,21, 261-274.

Hsieh, S. R. and C. L. Chen (1984): Septemcapsula yasunagai gen. et sp. nov., representative of a new family of the class Myxosporea. Acta Zootaxon. Sin., 9, 225-227.

安永統男・畑井喜司雄・小川七朗・安元 進 (1981:9 養殖スズキおよび養殖イシダイの脳内に見出された粘液胞子虫. 魚病研究, 16, 51-54.

Whipps, C. M., G. Grossl, R. D. Adlard, H. Yokoyama, M. S. Bryant, B. L. Munday and M. L. Kent (2004): Phylogeny of the Multivalvulidae (Myxozoa: Myxosporea) based on comparative ribosomal DNA sequence analysis. J. Parasitol., 90, 618-622

Zhang, J.Y., F. Meng, H. Yokoyama, J. Miyahara, I. Takami and K. Ogawa (2010): Myxosporean and microsporidian infections in cultured Pacific bluefin tuna Thunnus orientalis in Japan. Fish Sci., 76, 981-990..
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写真3.Kudoa yasunagaiの胞子

写真2.罹患ブリの脳にみられたKudoa yasunagai
のシスト

写真1.脊椎湾曲した罹患ブリ