寄生虫名 | Lernaea cyprinacea(イカリムシ) |
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分類学 | 節足動物門、甲殻亜門、カイアシ亜綱、キクロプス目 |
宿主名 | コイ(Cyprinus carpio)、キンギョ(Carassius auratus)、ウナギ(Anguilla japonica)、ドジョウ(Misgurnus anguillicaudatus)等、多くの淡水魚 |
病名 | イカリムシ症 |
寄生部位 | 体表、口腔壁(ウナギやドジョウ) |
肉眼所見 | 体表に寄生している虫体が容易に観察できる(写真1)。 |
寄生虫学 | 外部寄生性の甲殻類で、角状突起というイカリ状の頭部を宿主組織内に穿入させて寄生する。肉眼的に認められる成虫はすべて雌で、体長は10-12 mm程度である(写真2)。卵からノープリウス幼生が孵化して、第1コペポディドとなり宿主魚に寄生する(笠原、1962)。成虫になると交尾し、雄は脱落して雌のみが固着寄生する。頭部にある口器で魚の体液を摂取する。15℃以上で繁殖し、1年で4−5世代繰り返した後、12℃以下になると成長を止めて越冬する。 |
病理学 | 体表の寄生部位周辺に炎症が起こる。角状突起の穿入部位は他の病原菌の二次感染を招きやすいといわれる。ウナギの口腔壁に大量寄生した事例では、摂餌できなくなることで宿主に大きな影響を与えた。 |
人体に対する影響 | 人間には寄生しないので、食品衛生上の問題はない。 |
診断法 | 成虫(雌)の形態によって同定する。日本の淡水魚では、本種以外にはナマズに寄生するL. parasiluriが知られている(小川、2004)。 |
その他の情報 | 初期の養殖ウナギで大きな産業的被害を与えたが、有機リン剤を用いた防除法が開発されて以来、ほとんどなくなっている。ただし、海外の淡水養殖魚や観賞魚では、現在でもときどき見られる寄生虫である(Noga, 1996; Piasecki et al., 2004)。 |
参考文献 | Noga, E. J. (1996): ‘Fish Disease: Diagnosis and Treatment’, Mosby-Year
Book, Inc., Missouri, 367 p.
Piasecki, W., A. E. Goodwin, J. C. Eiras and B. F. Nowak (2004): Importance of copepoda in freshwater aquaculture. Zool. Studies, 43, 193-205. 笠原正五郎(1962):寄生性橈脚類イカリムシ(Lernaea cyprinacea)の生態と養殖池におけるその被害防除に関する研究。東大水実業績、3、103-196. 小川和夫(2004):大型寄生虫病。「魚介類の感染症・寄生虫病(若林久嗣・室賀清邦編)」、恒星社厚生閣、東京、pp. 381-405. |
または
(写真提供者:小川和夫)
写真2.イカリムシの雌虫体。頭部に角状突起、後部に1対の卵嚢がみられる。
写真1.キンギョの体表に寄生しているイカリムシ