寄生虫名 | Limnotrachelobdella sinensis |
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分類学 | 環形動物門、ヒル綱 |
宿主名 | ギンブナ(Carassius auratus langsdorfii)、ゲンゴロウブナ(Carassius cuvieri) |
寄生部位 | 鰓蓋の内側 |
肉眼所見 | 鰓蓋に吸着しているヒルが外観的に観察できる(写真1, 2)。まれに口唇や眼に寄生していることもある。鰓は貧血し、衰弱した魚は死亡する。 |
寄生虫学 | 吸血性のヒルで、体長3.8-4.9 cm、幅0.9-1.5 cm(写真3)。細い頸部と太い胴部に分かれ、前吸盤より後吸盤の方が大きい。胴部両側に11対の水泡状突起を有する。宿主の上で交尾した後、離脱して水草等に卵繭を産みつけると考えられる。生活環は一年に一回転すると推測されるが、淀川での調査ではフナへの寄生は12月から4月に限られていた(Ogawa et al., 2007)。 |
病理学 | 吸血による貧血と、後吸盤で付着することによる鰓蓋の出血および上皮のびらんが起きる。さらに、付着患部から冷水病菌(Flavobacterium psychrophilum)が二次感染することも示唆されている(Ogawa et al., 2007)。 |
人体に対する影響 | 人間には寄生しないので、食品衛生上の問題はない。 |
診断法 | 虫体の形態学的な観察を行う。体側の水泡状突起が特徴である。 |
その他の情報 | 2000年以降、淀川のギンブナとゲンゴロウブナに大量寄生した事例が報告されている(Ogawa et al., 2007)。2000−2005年に調査した結果、衰弱フナ119尾のうち80%が寄生しており、寄生数は最高で62虫体であった。本種はもともと中国のコイから記載されたが、淀川ではコイへの寄生は確認されていない。 |
参考文献 | Ogawa, K., O. Rusinek and M. Tanaka (2007): New record
of the leech Limnotrachelobdella sinensis
infecting freshwater fish from Japanese waters. Fish Pathol., 42, 85-89. |
または
写真3.L. sinensis虫体のホルマリン標本(腹側)。
(写真提供者:田中正治(1、2)、小川和夫(3))
写真2.鰓蓋の内側に吸着しているヒル。
写真1.フナの鰓蓋に吸着して寄生し、一部が外に露出ているヒル虫体(矢印)。