寄生虫名 Myxobolus episquamalis(ボラ鱗ミクソボルス)
分類学 ミクソゾア門、粘液胞子虫綱、双殻目
宿主名 ボラ(Mugil cephalus
病名 粘液胞子虫性皮膚症
寄生部位
肉眼所見 鱗上に赤みを帯びたシストの集塊(腫物)が見られる(写真1)。シスト集塊は台状で、半円形、菱形など様々な形状をとり、鱗の一部を占めるものから全面を覆うものなど様々である。シストの周囲には毛細血管の増生が生じて赤色を呈するため、醜悪な外観となる(写真2)。
寄生虫学 シストの内部で多数の胞子が産生される(写真3)。胞子は前端が尖った円形で、長さ7.5-9.5(平均8.6μm、幅6.0-7.56.8μm、厚さ4.5-5.55.1μm2個の極嚢の長さ3.8-5.04.4μm、幅2.0-3.02.2μm。生活環は不明。中間宿主の介在が推測される。
病理学 腫物は鱗の骨質板に接して存在し、薄いコラーゲン状の膜を持つ。表面には上皮細胞が薄層をなして覆っている。内部には、増生した宿主の結合組織に囲まれたシストの集塊が存在する。シストの間には血管形成が起こり、腫物が赤色を呈する原因となる(江草ら, 1989)。罹患魚が死亡するかどうかは不明。
人体に対する影響 人間には寄生しないので、食品衛生上の問題はない。
診断法 シストをつぶしてウェットマウントで胞子を確認する。標本はスメアにしてギムザ染色またはディフ・クイック染色する。
その他の情報 1980年代より、日本各地の沿岸域で報告されるようになった。Egusa et al.1990)は、本種をMyxobolus episquamalisとして新種記載したが、地中海のボラ類に寄生するMyxobolus exiguusと寄生部位や形態学的特徴が類似していることから、両種を同種とする説もあった(Lom and Dykova, 1992)。しかしその後、遺伝子解析と分子系統学的研究により、両種は別種であるとされた(Bahri et al., 2003)。
参考文献 Bahri, S., K. B. Andree and R. P. Hedrick (2003): Morphological and phylogenetic studies of marine Myxobolus spp. from mullet in Ichkeul Lake, Tunisia. J. Eukaryot. Microbiol., 50, 463-470.

江草周三・城 泰彦・岡 英夫・伊賀田邦義 (1989): ボラMugil cephalusMyxobolus属粘液胞子虫に因る皮膚病について. 魚病研究, 24, 59-60.

Egusa, S., Y. Maeno and M. Sorimachi (1990): A new species of Myxozoa, Myxobolus episquamalis sp. nov. infecting the scales of the mullet, Mugil cephalus L. Fish Pathol., 25, 87-91.

Lom, J. and I. Dykova (1992): Protozoan parasites of fishes. Elsevier, New York, 315p.
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写真3.M. episquamalisの胞子

(写真提供者:桃山和夫)

または

写真2.シストの集塊が形成されたボラの鱗

写真1.粘液胞子虫性皮膚病を呈したボラ