寄生虫名 | Metagonimus spp. (横川吸虫など) |
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分類学 | 扁形動物門、吸虫綱、後睾吸虫目 |
宿主名 | アユ(Plecoglossus altivelis)、ゲンゴロウブナ(Carassius cuvieri)、オイカワ(Zacco platypus)、シラウオ(Salangichthys microdon) |
病名 | 黒点病 |
寄生部位 | 筋肉、鱗 |
肉眼所見 | 鱗に寄生しているメタセルカリア(被嚢幼虫)周辺にメラニンが沈着するため寄生部位は黒い点として視認できる(写真1)。 |
寄生虫学 | 虫体の大きさは0.15-0.18 mmである(写真2)。魚類は第2中間宿主で、第1中間宿主はカワニナ類、終宿主はほ乳類や鳥類(小川, 2004)。従来、アユに寄生するのはMetagonimus yokogawai(横川吸虫)の1種だけであるとされていたが、現在ではMetagonimus miyatai(宮田吸虫)を含めて2種いると考えられている。また、コイやフナに寄生するMetagonimus takahashii(高橋吸虫)も知られている。 |
病理学 | 魚に対する害作用は軽微であり、被寄生魚の行動異常や死亡は報告されていない。 |
人体に対する影響 | 成虫は人間の小腸に寄生しうる。多数寄生により下痢や腹痛を引き起こすこともあるが、重症になることはない。駆虫薬による治療が可能である。 |
診断法 | コイ、フナに寄生するのは高橋吸虫である。アユの場合、筋肉寄生のものは横川吸虫として良いが、鱗に寄生している横川吸虫と宮田吸虫を形態で識別することは困難である。 |
その他の情報 | 琵琶湖において、アユへの寄生は4月に始まり8月にピークに達するという報告がある(斉藤, 1999)。これは、カワニナからのセルカリアの遊出に水温が影響を与えることを示している。河川におけるカワニナからのセルカリア遊出もほぼ同様な傾向を示した。天然アユにおけるMetagonimusの寄生率は高く、当然、河川水を用いた養殖アユにも寄生が見られる。一方で、地下水を利用した養殖場では、アユへの寄生は見られない。 |
参考文献 | 小川和夫 (2004): 大型寄生虫病.
魚介類の感染症・寄生虫病(若林久嗣・室賀清邦編),
恒星社厚生閣,
pp.381-405. 斉藤 奨 (1999): メタゴニムス?1960年以降の研究?.「日本における寄虫生学の研究」第7巻(大鶴正満・亀谷 了・林 滋生監修), 目黒寄生虫館, 205-215. |
または
写真1.横川吸虫に罹患したアユ。矢印はシストを示す。
写真2.Metagonimus yokogawaiのメタセルカリア
(写真提供者:桃山和夫)