寄生虫名 | Myxobolus wulii(ミクソボルス・ウーリー) |
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分類学 | ミクソゾア門、粘液胞子虫綱、双殻目 |
宿主名 | フナ、キンギョ(Carassius auratus) |
寄生部位 | 肝膵臓または鰓 |
肉眼所見 | 肝膵臓に寄生するタイプと鰓に寄生するタイプの2型が存在する。肝膵臓に寄生した場合、外観的に腹部膨満を呈し慢性的に死亡する。解剖すると、腹腔内に肥大した肝膵臓が充満している(写真1)。鰓に寄生した場合は、鰓弁に多数の小白点状シストが観察され、大量死を起こす。 |
寄生虫学 | シストの内部で多数の胞子が産生される(写真2)。胞子は卵形で、長さ約17(15-18)μm、幅約10(9-12)μm、厚さ約8(7-9)μm。2個の極嚢の長さ約8 μm、幅約3 μm。生活環は不明。本種は、もともと中国でキンギョの鰓に寄生するMyxosoma magnaとして記載された(Wu and Li, 1986)が、Myxosoma属がMyxobolus属のシノニムとされたことに伴い、Myxobolus wuliiと再命名された(Landsberg and Lom, 1991)。 |
病理学 | 鰓に寄生した場合、シストの大きさが鰓薄板の数倍に達する結果、鰓薄板の変形、血流の阻害、鰓弁の癒着など顕著な病理変化をもたらす(Yokoyama et al., 1992)。 |
人体に対する影響 | 人間には寄生しないので、食品衛生上の問題はない。 |
診断法 | シストをつぶしてウェットマウントで胞子を確認する。標本はスメアにしてギムザ染色またはディフ・クイック染色する。 |
その他の情報 | この寄生虫は、その後、中国でもフナの肝膵臓から発見されている(Chen and Ma, 1998)が、なぜ2型の寄生部位があるのか不明である。両者は胞子の形態が一致するために同種とされているが、遺伝子レベルで再検討する必要がありそうである。 |
参考文献 | Chen, Q. L., and C. L. Ma (1998): Myxozoa, Myxosporea. Fauna Sinica. Beijing,
Science Press, 987 p.
Landsberg, J. H. and J. Lom (1991): Taxonomy of the genera of the Myxobolus/Myxosoma group (Myxobolidae: Myxosporea), current listing of species and revision of synonyms. Syst. Parasitol., 18, 165-186. Wu, B.-H. and Z.-F. Li (1986): Six new species of myxosporidian from freshwater fishes in Zhejiang Province (China). Acta Zootaxonomica Sinica, 11, 1-9. Yokoyama, H., K. Ogawa and H. Wakabayashi (1992): Branchial pathology of cyprinid fish infected with two myxosporean parasites. In ‘Diseases in Asian Aquaculture (eds. by M. Shariff, R. P. Subasinghe and J. R. Arthur)’, Fish Health Section of Asian Fisheries Society, Philippines, pp. 337-343. |
写真2.Myxobolus wuliiの肝膵臓寄生を受けた中国産フナ。
または
写真1.Myxobolus wuliiの肝膵臓寄生を受けた
キンギョ。
写真3.M. wuliiの胞子。
(写真提供者:章 晋勇(2))