または
寄生虫名 | Pectenophilus ornatus(ホタテエラカザリ) |
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分類学 | 節足動物門、顎脚綱、キクロプス目、ミチリコーラ科 |
宿主名 | ホタテガイ(Patinopecten yessoensis)、アカザラガイ(Chlamys farreri nipponensis)、アズマニシキガイ(Chlamys farreri farreri) |
寄生部位 | 鰓 |
肉眼所見 | 外観上の異常は見られない。開殻すると、鰓上に黄色から橙黄色の虫体が寄生しているのを肉眼で確認できる(写真1)。 |
寄生虫学 | 寄生性の甲殻類である。ホタテ貝に寄生しているのは全て雌で、雄は雌の体内で生活する。雌の体は平柿形で、体側が五葉に分かれる。雌の体長は最大で8 mm(写真2)。他のカイアシ類において見られるような頭部や胴部、生殖節等の体節構造を持たないなど特異な形態から、類縁関係が不明であった。しかし近年、分子系統解析によりミチリコーラ科に属することが明らかになった(Huys et al., 2006)。 |
病理学 | 雌が口を宿主の血管に連結させて吸血するため、多数寄生すると宿主は痩せ、肥満度の減少が見られる(Nagasawa and Nagata, 1992)。 |
人体に対する影響 | 人間には寄生しないので、食品衛生上の問題はない。 |
診断法 | 殻を開けると、数mmの大きさの虫体が肉眼で容易に確認できる。 |
その他の情報 | 本虫は従来、蔓脚類のフクロムシの仲間であると考えられていたが、その後の詳細な形態学的観察により、カイアシ類であることが明らかになった(Nagasawa et al., 1988)。分布域は、北海道の南端から三重県までの太平洋あるいはその隣接海域であり、冬期の表面水温が5-6℃以上の海域である(長澤, 1999)。また、我が国以外からの報告はない。4月から6月には比較的小型で成熟していない個体が多いのに対し、秋から冬には成熟した大型個体が多く見られることから、本虫の感染時期は主に春であると考えられている(長澤, 1999)。本症に有効な治療・予防法は開発されていない。対策としては、本症の発生地域から他の地域に活きホタテ貝を移動しないことがあげられる。また、地蒔き養殖よりも垂下養殖で、垂下養殖においては海面に近いほど寄生数が少ない。 |
参考文献 |
Huys, R., J. Llewellyn-Hughes, P. D. Olson and K. Nagasawa (2006): Small
subunit rDNA and Bayesian inference reveal Pectenophilus ornatus (Copepoda incertae sedis) as highly transformed Mytilicolidae, and support
assignment of Chondracanthidae and Xarifiidae to Lichomolgoidea (Cyclopoida).
Biol. J. Linn. Soc., 87, 403-424. Nagasawa, K., J. Bresciani and J. Lutzen (1988): Morphology of Pectenophilus ornatus, new genus, new species, a copepod parasite of the Japanese scallop Patinopecten yessoensis. J. Crust. Biol., 81, 31-42. 長澤和也 (1999): 寄生性甲殻類の異端児、ホタテエラカザリの形態と生態. 海洋と生物, 21, 471-476. Nagasawa, K. and M. Nagata (1992): Effects of Pectenophilus ornatus (Copepoda) on the biomass of Japanese scallop Patinopecten yessoensis. J. Parasitol., 78, 552-554. |
写真2.ホタテガイから取り出したホタテエラカザリの虫体。
写真1.鰓にホタテエラカザリの寄生を受けたホタテガイ。