寄生虫名 Psettarium sp.(プセッタリウム)
分類学 扁形動物門、吸虫綱、有襞吸虫目
宿主名 トラフグ(Takifugu rubripes
病名 血管内吸虫症
寄生部位 内臓血管内
肉眼所見 目立った外観症状はないが、重症魚では衰弱して異常遊泳を示すこともある。解剖すると、内臓血管が怒張しており(写真1)、血管内から多数の虫体が観察される。内臓諸器官の毛細血管からは、大量の虫卵が検出される。
寄生虫学 日本産トラフグに寄生するPsettarium sp. TPJ (= tiger puffer from Japan) と中国産トラフグに寄生するPsettarium sp. TPC (= tiger puffer from China) は別種である。虫体の体長が前者は6-10 mm(写真2)、後者は3-5 mmであること、後者は前端近くを冠状に取り囲む約5列の小棘を有するが前者にはないことなどで区別できる(Ogawa et al., 2007)。いずれも内臓の血管内に寄生するが、入鰓動脈や腎動脈内からも観察される。発症は7月から8月に多い傾向にあるものの、吸虫の侵入時期や産卵生態などの生物学的特徴はあまり分かっていない。生活環には中間宿主が介在するが、不明である。
病理学 虫卵が内臓の血管を閉塞し、血行障害を引き起こす。脾臓、肝臓、腎臓、消化管等の腹腔内臓器に虫卵が大量に蓄積され、その周囲に肉芽腫形成がみられる。
人体に対する影響 人間には寄生しないので、食品衛生上の問題はない。
診断法 内臓血管内の虫体または虫卵を確認する。確定診断するためには虫体を検査して、2種の識別をする。
その他の情報 1993年、若狭湾の蓄養トラフグで発生した事例があったが、その後、国内の養殖トラフグでみられることはなかった。しかし、2005年、中国から輸入されたトラフグ種苗に同様の吸虫寄生が発見され、その異同が注目された。結局、形態学的検討により別種と判断されたOgawa et al., 2007。中国産種苗由来のPsettarium sp. TPCが日本に定着したという証拠はない。
参考文献 Ogawa, K., T. Nagano, N. Akai, A. Sugita and K. A. Hall (2007): Blood fluke infection of cultured tiger puffer Takifugu rubripes imported from China to Japan. Fish Pathol., 42, 91-99.

(写真提供者:杉田顕浩(1)、小川和夫(2))

写真2.内臓血管から取り出したPsettarium sp. TPJ。

写真1.血管内吸虫の寄生を受けたトラフグの腸管。
血管が怒張している(矢印)。

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