寄生虫名 | Ergasilus zacconis(オイカワニセエラジラミ) |
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分類学 | 節足動物門、甲殻亜門、カイアシ亜綱、ツブムシ目 |
宿主名 | アユ(Plecoglossus altivelis)、オイカワ(Zacco platypus) |
病名 | エルガシルス症 |
寄生部位 | 鰓 |
肉眼所見 | 鰓に寄生している虫体が卵嚢の存在により容易に観察できる(写真1)。重度の寄生を受けると、鰓が退色する。 |
寄生虫学 | 外部寄生性の甲殻類で、頭節、胸節、生殖節、腹節、尾叉より成る(Kim and Nagasawa, 2006)。肉眼的に認められる成虫はすべて雌で、虫体長は0.7-1.7 mm程度である(写真2)。卵からノープリウス幼生が孵化して、コペポディドとなり宿主魚に定着する。鉤爪状の第2触角により鰓弁を把握して懸着する。寄生虫体は、増生した組織を摂食すると考えられる。本種は従来、Pseudergasilus属に含められていたが、Kim & Choi(2003)によってErgasilus属に移され、Kim & Nagasawa(2006)によって再記載された(長澤ら、2007)。 |
病理学 | 鰓の寄生部位に漏出性出血、うっ血、上皮増生、水腫、粘液分泌等の病理変化が見られる(中島・江草、1974)。重度の寄生を受けた魚は食欲不振に陥り、成長が阻害される。 |
人体に対する影響 | 人間には寄生しないので、食品衛生上の問題はない。 |
診断法 | 成虫(雌)の形態によって同定する。ナマズに寄生するナマズニセエラジラミ(E. parasiluri)とは、虫体各部位の測定値によって区別できる(中島・江草、1973)。日本産ニセエラジラミ科カイアシ類の種同定については、長澤ら(2007)による検索表が便利である。 |
その他の情報 | 昭和40年代後半、琵琶湖産アユ種苗(コアユ)を導入した養殖アユで問題となった。 |
参考文献 | Kim, I.-H. and S.-K. Choi (2003): Copepod parasites (Crustacea) of freshwater
fishes in Korea. Korean J. Syst. Zool., 19, 57-93. Kim, I.-H. and K. Nagasawa (2006) Redescription of Ergasilus zacconis (Copepoda: Poecilostomatoida: Ergasilidae) parasitic on the freshwater fish Zacco platypus from Japan. Korean J. Syst. Zool., 22, 121-125. 中島健次・江草周三(1973):養殖アユの鰓に懸着するPseudergasilus zacconis YAMAGUTI (Cyclopidea: Ergasilidae)-I.その形態。魚病研究, 8, 106-110. 中島健次・江草周三(1974):養殖アユの鰓に懸着するPseudergasilus zacconis YAMAGUTI (Cyclopidea: Ergasilidae)-II.その害性と駆除の試み。魚病研究, 9, 95-99. 長澤和也・海野徹也・上野大輔・大塚 攻(2007):魚類寄生虫またはプランクトンとして出現する日本産ニセエラジラミ科カイアシ類の目録(1895〜2007年)。日本生物地理学会会報,62(印刷中) |
または
写真2.E. zacconisの雌虫体。一対の卵嚢がみられる。
写真1.アユの鰓弁に寄生しているエルガシルス
(写真提供者:江草周三)