寄生虫名 | Thelohanellus kitauei(テロハネルス・キタウエイ) |
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分類学 | ミクソゾア門、粘液胞子虫綱、双殻目 |
宿主名 | コイ(Cyprinus carpio) |
病名 | 腸管テロハネルス症 |
寄生部位 | 腸管 |
肉眼所見 | 発病は1歳魚に限定される。外観的には、成長鈍化して体躯がやせ、「背こけ」症状を呈する。腹部が膨満することも多い。解剖すると、腸管に径数ミリから数センチのシストが多数観察される(写真1)。 |
寄生虫学 | シストの内部では寄生体が管状に発育し、多数の胞子が産生される(Egusa & Nakajima, 1981)。胞子は流滴型で長さ23-29(平均26.3)μm、幅8-11(9.2)μm。極嚢を一つ持ち、その長さは14-18(16.8)μm。胞子本体の外側に膜状のエンベロープがあり、それを含めた全長は31-35(33.4)μmである(写真2)。生活環は不明であるが、交互宿主として貧毛類が関与すると予想される。 |
病理学 | 腸管壁に形成された腫瘤状のシストは腸管の内部に突出し、腸閉塞を起こして死に至らしめる。シスト周辺の腸管組織に目立った病理変化はみられないが、隣接の肝膵臓が物理的圧迫により萎縮する。 |
人体に対する影響 | 人間には寄生しないので、食品衛生上の問題はない。 |
診断法 | シストをつぶしてウェットマウント検査、またはスタンプ標本をディフ・クイック染色して、胞子の形態を確認する。 |
その他の情報 | 1978年に鹿児島県の養殖コイで初めて見つかった後、茨城県や長野県など全国に拡がった。ある調査では、寄生率が22.6%、死亡率が9%と見積もられた(Egusa & Nakajima, 1981)。しかしその後急速に減少し、現在ではほとんどまったく見られなくなっている。 |
参考文献 | Egusa, S. and K. Nakajima (1981): A new myxozoa Thelohanellus kitauei, the cause of intestinal giant cystic disease of carp. Fish Pathol., 15, 213-218. |
または
写真1.腸管テロハネルス症を呈したコイの剖検。
写真2.T. kitaueiの胞子。
(写真提供者:江草周三(1)、小川和夫(2))