寄生虫名 X-cellX細胞)
分類学 原生動物
宿主名 マハゼ(Acanthogobius flavimanus)、クロガシラ(Pleuronectes schrenki)、アカガレイ(Hippoglossoides dubius)、マダラ(Gadus macrocephalus)タイセイヨウタラ(Gadus morhua
病名 X細胞病
寄生部位 マハゼの場合、眼球、体表。タラ類では偽鰓、カレイ類では鰓、皮膚。
肉眼所見 マハゼの場合、外観的に頭部が隆起し眼球が突出する(写真1)。その外観から「お化けハゼ」とも呼ばれる。剖検的には、患部に腫瘍様の新生物が形成される(写真2、3)
寄生虫学 本病の病原体は、X細胞と呼ばれる。X細胞の大きさは5-20μmで、大きく丸い核を持つのが特徴的である(写真4)。遺伝子解析によって原生動物に分類されることが明らかになっているが、系統学的に近縁な生物群は不明である(Miwa et al., 2004)。
病理学 患部には、魚種を問わず共通した形態的特徴を持つX細胞が多数見られる。X細胞が組織中で増殖することにより、患部に腫瘍様の病変が生じる。本病により罹病魚が死亡するかどうかは不明。
人体に対する影響 人間には寄生しないので、食品衛生上の問題はない。
診断法 患部の組織切片を作製し、X細胞の存在を確認する。
その他の情報 温帯から寒帯域に生息するタラ類、異体類、ハゼ類などの底性魚類にしばしば見られる病気である。そもそも、X細胞の正体については、水質汚染あるいはウイルス感染により魚の細胞が腫瘍化したものであるという説と、何らかの原生動物であるという説があった(Shinkawa and Yamazaki, 1987)。上述したように、現在ではX細胞は原生動物であることが明らかになっている。
参考文献 Miwa, S., C. Nakayasu, T. Kamaishi and Y. Yoshiura (2004): X-cells in fish pseudotumors are parasitic protozoans. Dis. Aquat. Org., 58, 165-170.

Shinkawa, T. and F. Yamazaki (1987): Proliferative patterns of X-cells found in the tumorous lesions of Japanese goby. Nippon Suisan Gakkaishi, 53, 563-568.
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写真4.クロガシラの患部の組織切片。X細胞(矢印)が多数みられる。

写真3.クロガシラの患部の拡大。

写真2.X細胞病を呈したクロガシラ。体表に顕著な
腫瘍様患部がみられる。

写真1.X細胞病を呈したマハゼ。背中の病変と
眼球突出が顕著(矢印)。