寄生虫名 | Nymphonella tapetis(カイヤドリウミグモ) |
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分類学 | 節足動物門、皆脚(ウミグモ)綱、皆脚目 |
宿主名 | アサリ(Ruditapes philippinarum)、オニアサリ(Protothaca jedoensis)、シズクガイ(Theora fragilis)、キヌマトイガイ(Hiatella orientalis)等 |
寄生部位 | 外套腔 |
肉眼所見 | 二枚貝類の外套腔から鰓、唇弁の表面に、0.5-5 mmのウミグモが1から数十個体観察される(写真1,2)。 |
寄生虫学 | 幼生は頭部前端にある吻を貝の体壁に穿入させ、体液を吸収して成長する(Ogawa & Matsuzaki, 1985)。成体になると外に出て潜砂し自由生活性になるといわれていたが、貝の中で成熟する例も観察されている(多留ら、2007)。潮間帯に生息していることから広塩性であることは間違いないが、低温(13℃)耐性もあると考えられる(多留ら、2007)。 |
病理学 | 重度の寄生により栄養的な負荷がかかるだけでなく、水管から鰓に至る外套腔を占拠することで水流を阻害し、呼吸効率の低下をおよぼす可能性がある(多留ら、2007)。結果として、宿主貝は衰弱して死亡することもある。 |
人体に対する影響 | 人間には寄生しないので、食品衛生上の問題はない。寄生を受けた貝にも毒性(下痢性、麻痺性)はない。 |
診断法 | 外套腔内に寄生しているクモ状の虫体は、容易に肉眼で観察できる。頭部、4節の胸部、萎縮した腹部からなり、胸部各節は長い付属肢1対を有する。 |
その他の情報 | 2007年6月末頃から千葉県木更津市の東京湾岸(盤洲干潟)においてアサリの大量死が発生し、地元漁協では出荷停止に追い込まれるという事例があった。大量発生の原因は不明であるが、他地域から持ち込まれた可能性も考えられる(多留ら、2007)。 |
参考文献 |
Ogawa, K. and K. Matsuzaki
(1985): Discovery of bivalve-infesting Pycnogonida, Nymphonella tapetis, in a new host, Hiatella orientalis. Zool.
Sci., 2, 583-589. 多留聖典、中山聖子、高崎隆志、駒井智幸(2007):カイヤドリウミグモNymphonella tapetisの東京湾盤洲干潟における二枚貝類への寄生状況について。うみうし通信、56(9月号)、4-5. |
または
写真2.アサリから取り出したカイヤドリウミグモ。
(写真提供者:桃山和夫)
写真1.ウミグモの寄生を受けたアサリ。