研究内容

平成28年4月現在、進行中の研究は以下の通りです。

アサリのパーキンサス属原虫の病害性に関する研究(良永)

パーキンサス属原虫

パーキンサス属原虫の遊走子と遊走子嚢

1980年代半ば以降、日本各地でアサリ資源量が激減しています。しかし、その原因は明らかでなく、様々な努力にもかかわらず、資源量の回復にはつながっていません。本研究室では、国内のアサリに広く寄生しているパーキンサス属原虫が資源量減少の原因であるという仮説の下、室内実験や野外調査、野外実験によってパーキンサス属原虫と天然アサリの減耗との関係を調べています。また同時に、パーキンサス属原虫の影響を受けにくいアサリ増殖手法の開発を試みています。TOP

海水魚の白点病の発生メカニズムおよび化学療法に関する研究(良永)

海産白点虫

白点病に羅病したマダイ

本研究室では、海水魚の白点病の原因である繊毛虫 Cryptocaryon irritansを魚類培養細胞を餌として試験管内で成長させることに世界で初めて成功しました。この方法を用いて、病気を起こすメカニズムや化学療法に関する様々な研究を行っています。現在は、養殖場において白点病発生の引き金となる環境要因の解明ならびワクチンや経口治療薬の開発を中心に研究を行っています。TOP

天然シャコの感染症に関する研究(良永)

病変シャコ

エラ異常個体

近年、東京湾、伊勢湾や瀬戸内海ではシャコ資源が著しく減少しています。これは環境の変化が原因とされていますが、資源量の減少は環境が異なる複数の漁場で起きており、環境変化だけで説明可能なのか疑問が残ります。一方、これまでに天然のシャコからは真菌類や卵菌類の感染が報告されています。しかし、これらの病原体の資源減少への関与は検討されていません。そこで、東京湾および伊勢湾の天然シャコにおける病気の発生状況を調査するとともに、病気の原因となる病原体の特定を試みています。TOP

アサリのカイヤドリウミグモの生態に関する研究(良永)

カイヤドリウミグモ

カイヤドリウミグモの成体

2007年以来、東京湾東岸のアサリに節足動物の一種カイヤドリウミグモが大量寄生し、当地のアサリに大量死亡を引き起こしています。本研究室では、千葉県東京湾漁業研究所と共同でカイヤドリウミグモの生態を研究し、この寄生虫が生息する状態でもアサリの生産が可能となる放流・増殖手法の開発を目指しています。TOP

アニサキス属線虫の生態に関する研究(良永)

アニサキス

スケトウダラ肝臓に寄生したアニサキス属線虫

人魚共通病原体として有名なアニサキス属線虫は、最近では食物アレルギーの原因としても食品衛生上の問題となっています。また、日本近海の海産魚に寄生しているアニサキス属線虫には、形態的識別が困難な2種が存在していることが知られるようになりました。本研究室では、この2種のアニサキス属線虫の生態に関する研究を行っています。TOP

マガキ卵巣肥大症(いわゆる異常卵塊)の対策に関する研究(伊藤)

異常卵塊マガキ

異常卵塊を呈したマガキ

マガキ卵巣肥大症とは、原虫Marteilioides (=Marteilia) chungmuensisがマガキの卵巣に寄生することで発生する病気です。発症したマガキは軟体部に卵巣からなる膨隆が形成され、外観が非常に悪くなり商品価値を失います。そのため、西日本のマガキ養殖場でこの病気は大きな問題となっています。そこで、本研究室ではこれまでに行われた疫学調査の結果や疾病の季節的変遷、及びマガキの生殖生理を鑑み、産業被害を防ぐための対策について研究しています。また、本疾病の発生をコントロールするため、原因寄生虫の生活環解明を試みています。現在、情報や知見を共有するため、多くの試験研究機関との共同研究体制構築を模索しているところです。TOP

貝類の生体防御と疾病対策に関する研究(伊藤)

貝類養殖の生産量や対象種は世界的に増加傾向にありますが、その一方で様々な疾病問題が顕在化しつつあります。しかし、魚類と異なり粗放的環境下で生産を行う貝類養殖の場合、薬剤等による対策は現実的でありません。そこで、本研究室では、貝類自身が本来持っている生体防御能力を様々な方法で発揮させることで疾病に対抗できないか、研究を行っています。TOP

魚類寄生粘液胞子虫の生物学、病理学、食品衛生学(横山)

サクラクドア

図1:クロマグロの脳に寄生するサクラクドア

放線胞子虫

図2:オヨギミミズに寄生する放線胞子虫

やせ病

図3:トラフグの粘液胞子虫性やせ病

魚の寄生虫には多種多様な生物群が含まれますが、粘液胞子虫はもっともミステリアスな寄生虫のひとつです。大きさ10ミクロンくらいの胞子を作り、顕微鏡で観察するとシンプルで花のようなデザインをしています(図1)。魚体内における粘液胞子虫ステージと、イトミミズやゴカイのような環形動物体内における放線胞子虫ステージ(図2)を交互に繰り返すというユニークな生活環を持っています。そこで私たちは、日本中の河川、養殖池、沿岸環境中から放線胞子虫を探し出し、感染実験や遺伝子解析により生活環を明らかにすることを目指しています。放線胞子虫の魚への感染メカニズムについての研究は、粘液胞子虫の感染防除対策を考える上でも役立つと期待されます。

粘液胞子虫が魚類に感染すると、ブリの背骨が曲がったり、マグロの肉が溶けたり、トラフグがガリガリにやせてしまったり(図3)する場合があり、養殖業や水産業に大きな経済的被害を与えます。粘液胞子虫病の治療薬はないので、養殖方法や環境を改善するという方向で実用的な対策を開発することを目標にしています。

近年、養殖ヒラメに寄生するクドア属粘液胞子虫が人間の食中毒の原因になることが証明され、公衆衛生上の問題になっています。粘液胞子虫が食中毒を起こすというのは世界的にも初めての事例であり、大きな衝撃を与えました。現在、水産庁や厚生労働省の各研究機関と協力して、養殖現場から流通、消費に至るまでの過程で、安心・安全な養殖ヒラメを作り、食中毒を防止する技術を開発することを目的に研究を行っています。TOP

海産魚の微胞子虫病の生物学と病理学(横山)

べこ病

べこ病ブリの病理組織像

海産魚の微胞子虫病として、古くからブリのべこ病などが知られていましたが、近年、クロマグロの筋肉寄生微胞子虫やカンパチ・ブリの脳脊髄炎原因微胞子虫が発見され、養殖業において問題となっています。海産微胞子虫類の生活環には中間宿主が介在すると推測されているものの、いまだに不明です。そこで、分子生物学的手法を駆使して生活環を解明すると同時に、診断技術や感染防除法を確立することを目標に研究をしています。TOP

また、これまでに以下のような研究も行ってきました。

海水魚の住血吸虫類の薬剤治療・宿主特異性に関する研究(良永)

住血吸虫

住血吸虫の電子顕微鏡写真

クロマグロやカンパチ養殖において、住血吸虫の寄生による死亡が問題になっています。住血吸虫には一般的に駆虫薬プラジクアンテルが有効であることが経験的に知られていますが、魚類の住血吸虫に対する有効濃度や作用メカニズムなど、薬剤の開発に必要な基本的情報が欠けています。本研究室ではコモンフグに寄生する住血吸虫を培地内で長期間維持する方法を開発し、これを実験モデルとして情報の蓄積を行っています。また、合わせて、コモンフグの住血吸虫が持つ宿主特異性のメカニズムについても研究しています。TOP

海外疾病侵入防除のためのリスクコミュニケーションに関する研究(良永)

日本には、これまで多くの病原体が海外から侵入し、養殖および野生の水生生物に打撃を与えています。この問題の解決のためには、法制度の整備とともに、水生生物の養殖や輸入にかかわる業界や関係者がリスク情報を十分に共有し、かつリスクに対応する方策をとる必要があります。そこで本研究室では、業界や関係者とどのようにリスク情報を共有し、リスク方策のためどのように合意形成するべきかを、関係者への聞き取り調査、アンケート調査、リスク情報共有のための実践研究などにより探っています。TOP